便利で不便、簡単で複雑 | NPO法人コモンビート
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便利で不便、簡単で複雑

ちょっと不便なコモンビート

「毎日、すごく便利なものに囲まれて生活をしているなぁ」
最近特に実感します。
現代に生まれてよかったなぁと思うこともたくさんあります。
たとえば「もし車や電車がなかったなら?」と考えると、いまあるものがとても愛おしくなります。
そうした物たちも、いろいろな人たちが「なんとかしよう!」と考え、情熱とアイデアを持ち寄って実現したものばかりです。
私たちの今の生活はそうした人たちの情熱の上に成り立っているともいえるでしょう。

ただ最近、「本当にそれって必要なの?」と思ってしまうようなものにも出会います。
過剰な便利さ」に疲れることがあります。
便利というのは、継続すると慣れてしまい、一定以上になると不要になったりします。
過剰サービスみたいなものも多く、いらないものまで受け取らされてしまうこともあります。
タダだからいいでしょ?と言わんばかりのものも多くあります。
また、便利さを悪用されることで、とても不便さを生み出しているものもたくさんあります。

たとえばメールもその1つです。
世の中にはスパムメールというものがあります。
自分が必要としないメールを大量に送りつけられる、あのメールです。
何か目的を持って送られるものもありますが、愉快犯がやっている場合もあります。
メールはとっても便利な機能ですが、悪用されるととても不便になります。

コモンビートでは大量のメーリングリストが動いています。
こうした中にメールが紛れ込んできます。
迷惑メールフィルターなるものがありますが、なりすましメールなどで誰かのフリをしてメールをするものもあります。
もうイタチゴッコです。
便利なメーリングリストですが、こうしたメールを完全に防ぐためにさらにお金をかける必要がでてきたり、誰かがこの対策を練るために労力を使ったりします。
タダで便利でも、実際には大きなコストを要してしまうわけです。
コモンビートでも日々対策をしていますが、これらの迷惑メールがゼロになることはありないわけで、無駄な戦いをせざるをえない状況です。

便利を過信するととても不便さを生み出します。
便利だからこそ、ちょっとしたことで不便さを感じてしまうのです。
とても便利で簡単な操作でできるものも、最近はその仕組みが高度になってきているので、簡単な分だけ中はとても複雑な構造になっています。
ですから、使っている側の簡単さとは裏腹になっています。

僕はIT関係で15年以上に渡り仕事をしてきました。
だからというわけではありませんが、ITについての便利さをよく知っています。
インターネットが生まれる瞬間から進化の過程を見てきました。
スパムメールがない時代もあったのです。
アナログな時代から何が移り変わり何が変わらなかったかというのをいろいろ感じてきました。
IT育ちな人人やここ最近ITという方はそれらが当たり前と思うかもしれません。
便利を選ばないことを鼻で笑う人もいるでしょう。
僕もいろいろなものが便利になっていく中で、便利さを過信してしまったことはあります。
便利さを知って間もないころは、便利さを過信しすぎる傾向にあるので、なんでも実現してくれると思いがちなのです。
でもその幻想はすぐに解けてしまいます。

そんな時間を15年も過ぎて、なぜ、こんなアナログ的なコモンビートを立ち上げたのか?
そういう質問もよく受けます。

便利さが解決してくれることもあるでしょうが、便利さの分だけ不便さを生み出してしまうものだとわかったからです。

便利は確実に不便を生み出し、簡単にすればするほど複雑になるのです。

だからとっても便利はいらないわけではありません。
ちょっと便利くらいが不便を生み出さない限界なのかもしれません。
だからコモンビートでは、ちょっとITくらいにしています。

たとえばCD屋さんでは店員のオススメは手書きですよね。
印刷でもできるのに、わざわざ手書きにしている理由があります。
印刷は情報が確実に伝わるでしょうが、手書きは少々見にくくても気持ちが伝わるからではないでしょうか?
メールなどのテキストだけで伝わらないから、絵文字や顔文字が出てきたのでしょう。

便利さの中で省かれた過程には、無駄と思える部分はたくさんあるでしょう。
でも、そこには本質が詰まっていたり、その過程に意味があったりするものです。
コモンビートはそうした便利さを利用しつつも、全部を便利にしたり簡単にしません。

ちょっと不便なコモンビートでありつづけることで、何かを見つめ直すことができる空間を提供できるのではないかと思っています。
一歩手前くらいの不便だと、いろいろ改善や工夫したくなり、頭が回転し始めるようです。
とてもいいことですね。