人生アンサンブル_15 将来の自分に見せたい。違いを楽しみ、頑張る今のわたし | NPO法人コモンビート
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人生アンサンブル_15 将来の自分に見せたい。違いを楽しみ、頑張る今のわたし

ダイバーシティ&インクルージョンは、わたしとあなたのこと──。コモンビートは、「わたしとあなた」という一人ひとりを起点にして、個性を響き合わせ、多様な価値観を認め合うことを目指しています。主要な活動である100人100日ミュージカルプログラムの参加者が、具体的に何を経験し、学び、そして仕事や人生にどんな変化を起こしているか。「人生アンサンブル」では、参加者の生の声をもとに、コモンビート広報室がお届けしています。


国籍や文化を越える、それがコモンビート

今回ご紹介するのは、台湾から日本に留学し、ビジュアルデザインを学ぶ専門学校に通う「めいこ」です。彼女は、インスタグラムでコモンビートを見つけ、「ミュージカルが初めての人でも参加できる」「市民どうしが協力して舞台をつくる」といった点に惹かれて参加を決めました。

もともと、ミュージカルが好きだっためいこ。彼女は、小学生の頃から合唱を続けていて、一人ひとりの力は小さくても、それが集まった時に大きなパワーになることや、そこに至るプロセスで互いを知る喜びを大切にしています。ダンス、台詞、歌を通じて、同じような体験ができると思い、コモンビートの扉を叩きました。

とは言え、めいこは、大人数で過ごすことがそんなに得意ではありません。よく知らない人と何を話していいか分からないし、緊張もある──。そういう状況について、めいこは次のように語ってくれました。

「最初はストレスがあったけど、コモンビートでは練習の他に、メンバーと交流する機会がたくさんあったので大丈夫でした。仲良くなるスピードが想像以上に早く、今では練習の後にみんなと飲み会に行くのが楽しみです。
だって、そうですよね。舞台のテーマがダイバーシティ&インクルージョンなのに、舞台に立つ人たちが仲良くないのは変です。コモンビートは人間関係を大切にすると聞いていたけど、本当なんだなと最初から思えました。

ミュージカルのテーマが重厚、だから話し合う

めいこが言う「舞台のテーマ」を、少しご紹介します。コモンビートの作品の舞台には、赤緑黄青の4つの大陸が登場します。最初はお互いを知らなかった大陸の人たちが、他の大陸の存在に気づき、そこから違いに驚き、楽しんでいましたが、いつしか衝突が…。

彼女の母国である台湾は、1895年から1945年まで植民地として日本に統治されていました。舞台では争いや犠牲が起こるシーンもあり、めいこにとって舞台のテーマは重厚で、強く響いてきます。

コモンビートでは、「この場面は、こういう意味合いがあると思う」「だから、こう演じよう」といった話し合いを必ず持ち、メンバーどうしで観客に伝えたいことを考えて練習に取り組みます。ある時、めいこが、他のメンバーの主張と違う意見を勇気を出して伝えたところ、「その視点で考えたことがなかった、教えてくれてありがとう」と言われました。こうした話し合いが続く中で、めいこは「やる気がどんどん上がり、稽古や本番で何か起こっても、この仲間がいるから何とかなる」と思えるようになったそうです。初めてのメンバーと、初めて取り組んだミュージカルですが、こうした信頼関係が彼女を支えています。「ミスがあっても、頑張って次回は取り返す。次にちゃんとすれば大丈夫。そう思えるんですよ」と静かに、しかし自信をもって語る姿がすてきでした。

子どもたちや、将来の自分に見せたい今のわたし

さて、めいこたちの舞台は、間もなく本番を迎えます。彼女に、今の心境を尋ねると、「満席になってほしい。舞台を観ることで、その人の力になって、何か新しい気持ちが生まれてほしい」と教えてくれました。そして、歌やダンスだけでなく、ストーリーの内容を感じて、深く考えてもらえるように、思いを込めて舞台に立つ準備を進めていくとのことです。

最後に、どういう人たちに舞台を観てほしいかを尋ねました。すると、なるほどと思う答えと、今まで聞いたことがない答えが返ってきました。なるほどと思ったのは、「子どもたちに伝えたい。人間関係は良い時も悪い時もある。人と違うことを考えたり、感じたりしても、作品のように乗り越え、仲良くなれると知ってほしい」というものです。

今まで聞いたことがなかったのは、「将来の自分に見せたい」というもの。彼女は、これからの人生で、いつ台湾に帰るかは分かりません。それでも、日本で専門性を身に付けるために学ぶのと並行して、コモンビートの舞台を創るために努力をした自分と、大切な仲間と過ごした時間を忘れたくない。だから将来の自分に見せて「こんなに頑張った自分がいることを覚えていて」と強く思っています。チケットを将来の自分にあげたい彼女は、コモンビートのミュージカルを通して、自分のことを今まで以上に理解できるようになり、何か話題があった時に「自分ならこう思う」と答えられるようになってきたそうです。


市民どうしが、エンターテインメントによってつながり、多様な価値観を認め合う──。そのことを、生まれ育った国や文化が違っても体感し、人生にいかしているめいこの様子に触れて、胸が熱くなりました。
めいこをはじめとした個性豊かなキャストのメッセージを舞台で受け取りにきてください!公演でお待ちしています!

■ミュージカル「A COMMON BEAT」第58期関西公演

日程:2023年11月11日(土)
会場:吹田市文化会館 メイシアター 大ホール
詳細:https://musical-acb.com/
観劇サポート(音声ガイド・字幕)あり