「この地に根づかないと意味がない」室園 悟志 | NPO法人コモンビート
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「この地に根づかないと意味がない」室園 悟志

「この地に根づかないと意味がない」室園 悟志

「待っているだけじゃ、永遠に誰もやらない」

今年4月から、東京から地元福岡県に移り住んでいる室園悟志さんは、大きなリュックを背負って颯爽と福岡空港で出迎えてくれた。
彼は、2013年2月から開始される「A COMMON BEAT」ミュージカルプロジェクト 第23期九州プログラムのプロデューサーとして、福岡での基盤づくりに励んでいる。
リュックの中身のほとんどは、体験説明会や公演のチラシだという。
「いつどこで誰と会っても渡せるように、出かける時にはいつも持ってる」と彼は笑う。


彼は、8期プログラム(東京)に初参加した時から、九州公演について漠然と思い描いていたという。
「その時は、いつか九州で公演やらないのかなぁってどこか他人事だった。今思うと…『やらないのかなぁ』って待っているだけじゃ、永遠に誰もやらないよな」
彼は、当時を振り返りそう話す。
それから3年が経ち、漠然と思い描いていた夢を実現するために、大きな一歩を踏み出すこととなる。
彼を突き動かしたものは、一体何だったのだろう…。
「ひとつは東日本大震災が起こった事が自分の中で大きかった。
去年、被災地を訪れて『結局、最後は人との絆が一番大事』と感じ、改めて自分も、地元で活動したいと思った。
そして、もうひとつ原動力になったのは、去年の11月に『僕たちは世界を変える事ができない』という映画を見た事だった。カンボジアに学校を建てたいと思ったある医大生が、周囲の人の気持ちを少しずつ動かしプロジェクトを立ち上げ、資金を集めて本当にカンボジアに学校を建てるという、実話に基づいてつくられた映画。でも最初主人公は、カンボジアに学校を建てたいと言っているわりには、カンボジアに一回も足を運んだ事はなかった。現状を何も知らないまま語っても、それが人に伝わるはずはない。それを見た時ハッとした。俺もこの主人公と同じだと。
九州で公演したいと言っているわりには、地元に帰って『ここでミュージカル公演がしたい』と言っていない。具体的に何も行動していない事に気がついた。
まずは福岡に帰らなきゃと思った」
そして、彼はその映画を見てからわずか2週間後、福岡の地を踏んでいた。
「公演に協力してくれそうな知人とお茶をしていた時、たまたま通りかかったその人の知り合いから縁が広がり、ミュージカル公演の会場候補になりそうな劇場の館長さんを紹介して頂き、直接お話する機会を得る事ができた。わずかな時間で、そこまで進展するなんて思いもしなかった」
自ら行動する大切さを実感した彼だったが、人に自分の想いを伝えていく点で、勢いだけで準備が足りなかった事を反省したという。
彼は九州公演に向けて本格的に準備をするために、拠点を東京から地元福岡に移す事を決意する。
「この地に根づかないと意味がない」室園 悟志

「ゼロからのスタートは面白い!」

今年3月、大学卒業後4年間勤めていた航空機関連の会社を辞め、4月に福岡に戻った。
現在、彼は地元でウェブコンサルタントとして働くかたわら、休日はプログラムの体験説明会を行ったり、人脈を広げるために活動を続けている。
初めての地でのミュージカルプログラム開催とあって、説明会は全部で11回と通常に比べてかなり多い。
5月からスタートし、月1回のペースで開催されている。
「今はひとつの体験説明会が終わると、すぐに次の説明会の日が来るといった状態が続いているので、自分自身が体験説明会に追われる感じが強いね」
と語る彼だが、その表情はどこか楽しげだ。
「体験説明会に来てくれた人達のほとんどが『楽しかった』と言ってくれるので、とても嬉しい!
説明会に来てくれる人も増えてきた。まだ全体的に参加者は少なくて、正直焦りもあるけど、体験説明会がない休日は、地域の情報誌をチェックして人が集まりそうなイベントに参加したり、スタッフに紹介してもらった人と会ったりと、地道に活動して少しずつ繋がりを広げている」
現在、九州ミュージカルプログラムのスタッフは12名。
主に休日にミーティングをしているという。
「今までのミュージカルプログラムに参加経験があるないに関わらず、九州公演を開催する意義を感じて集まってくれた熱いメンバーが揃っている。
平日はお互い遠くてなかなか集まれないので、平日もコミュニケーションとれるように工夫したい!たとえばスカイプでミーティングしたり。ミーティングだけじゃなく、遊びの企画も入れたりして、スタッフ間の絆をどんどん深めていきたい」
どこまでも楽しそうに語る彼だが、プロデューサーとしての不安はないのだろうか…。
「まだプロデューサとしての感覚はよく分からないけど、このプロジェクトに対しての責任の大きさは、日に日に増してきている。不安ももちろんある。でも何もないところから、少しづつ築き上げいくという、ゼロからのスタートは面白い!」
そして彼は、このプロジェクトの先の未来もしっかり視野に入れている。
「自分の中で、3ヵ年計画がある。1年目はとにかくやる!2年目は中心となるスタッフができる。3年目は、自分以外にもプロデューサー候補者を見つけたい。
ミュージカルプログラムが、この地に根づかないと意味がない。絶対、1回っきりで終わらせたくない!」
と語るしっかり落ち着いた声から、彼自身の覚悟が伝わってくる。
彼は、この生まれた故郷の大地に深く広く根をはり、新たな絆をしっかりと育んでいくだろう。

室園

室園 悟志(むろぞの さとし)

フェリーでたまたま隣になって話した人がA COMMON BEAT 6期プログラムのキャストだったという繋がりから、公演を観にいったのがきっかけで、8期プログラムにキャストとして参加する。その後も10期、12期キャスト兼スタッフ、18期は、スタッフとして活躍する。2013年2月から開始する「A COMMON BEAT」ミュージカルプロジェクト20123 第23期九州 100人100日プログラムのプロデューサーとして、日々地元での基盤づくりに励んでいる。
趣味は走る事。フルマラソン完走多数、100キロマラソンの完走も果たしている。