傷つけあいの連鎖を止める 「See the difference〜生活の中に隠れている「当たり前」という名のナイフ〜」開催レポート | NPO法人コモンビート
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傷つけあいの連鎖を止める 「See the difference〜生活の中に隠れている「当たり前」という名のナイフ〜」開催レポート

11月10日(水)、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)をテーマに、違いを知り、違いと出会い、違いとつながっていくためのイベント「See the difference」の第五回が開催されました!

今回は、NPO法人CRファクトリー代表理事の呉哲煥さんをゲストとしてお迎え!冒頭の自己紹介で「今日は、団体の活動よりも自分の内面に触れるお話になるのでちょっとだけ緊張しています」とおっしゃった呉さん。

こんな投げかけでトークは始まりました。

呉さんは、そのお名前から「日本人じゃないの?」「何人なの?」と聞かれることが幼少の頃から多かったそうです。そこには、「日本人らしい名前」と「そうでない名前」という無意識の選別や、「名前は○○人というアイデンディディを表している」「アイデンティティは一つだ」という思い込みが含まれているかもしれません。

また、みなさんは、日常の暮らしの中でこんなモヤモヤを抱えたことはありませんか?

-学校などで保護者に対し「父兄のみなさん」という名称が使われる
(母や姉はどこにいったの…?)

-彼氏いないの?どんな女性がタイプ?と聞かれる
(そもそもパートナーを望んでないのに…)

-二人目はまだ?
(え、子どもって2人以上産むのが当たり前なの…?)

当たり前というナイフ

その言葉を発している本人に必ずしも悪気があるわけではありません。ただ、自分や社会にとっての「普通」と、相手の「普通」は違うかもしれない。それは事実ではなく、自分の無意識での思い込みや偏見かもしれない。そんな前提を持たずにコミュニケーションをとることで、意図的でなくても相手を傷つけること。そんな「当たり前というナイフ」は、日常生活の中で実際よく見受けられるよね、というお話に、参加者のみなさんも思わず唸ったりたくさん頷いたり、心当たりがあるご様子。

ナイフに向き合う「戦術」

話はそのままモデレーターとのクロストークへ

子どもの頃から「無意識バイアス」や「マイクロアグレッション」とも呼ばれるこのナイフを突きつけられる経験が多かったという呉さんですが、「傷つけられたから、傷つけ返すのも違うと思う。」と言い切ります。

そんなナイフが当たり前に存在する社会にアンチテーゼを突きつけたいわけではない。自分だって思わずナイフを使ってしまって反省することもある。自分は優しくありたいけど、みんなもそうあるべきだと声高に叫ぼうとは思わない。

相手にナイフを向けられた時、相手にその場でしっかり言うというアプローチも、相手との関係性ができてから伝えるというアプローチも、反応しないという態度も、そこにはいろんな選択肢があって、その対応に唯一無二の正解はありません。ただ、「自分が相手に向けうるナイフに自覚的である」ことで、相手も自然とそうなってくれることを望む。そんな姿勢をナイフに対する「戦術」と呼ぶ呉さんのスタンスは、どこかこわばっていた参加者の肩の力を抜いてくれたようでした。

ナイフを振りかざさないために

無自覚にナイフを使わないために私達はどうしたら良いのか。また、相手を傷つける可能性を恐れすぎると、一歩踏み込んだコミュニケーションをとれなくなりそうでどうしたらいいのか。そんなモデレーターや参加者からの問いかけに対し、呉さんからは「いろんな当たり前や違いにまずは出会うこと」というお答えが返ってきました。

全体トークでは、「アーミーナイフじゃなくバターナイフぐらいにしたい」など
質問から大喜利にまで発展…

呉さんが大学時代のボランティア経験から気づいた、障がいを特別扱いしない、支援しなければいけない対象として見なすのではなく「ただ一緒にいる」という在り方。

わかりやすい目に見える違いだけでなくても、自分も相手もいろんな違いを持っている。同じ違いを持っていなくても、私たちは「誰もが違いを持っている」という共通点では繋がれる。自分や身近なところにある違いをまず知って受け入れることで、それを他の新たな違いへの対応のヒントにしていくことができるのかもしれません。

明日からのそれぞれの行動で変えていこう

明日からどうする?それぞれのアクション宣言

ゲストのお話を聞いて、参加者同士で対話をして、イベント最後は、一人ひとりのアクション宣言!自分が相手に向けうるナイフ、そして、相手から自分に向けられうるナイフに、どう対応していくのか。その「戦術」の一歩をそれぞれが共有してイベントは終了となりました。

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■編集後記

自分も誰かにナイフを向けた心当たりがあって、どこかバツが悪い。人からナイフを向けられたことを思い出すと、どこか気持ちがもやっとする。そんなテーマを扱ったにも関わらず、イベントの雰囲気が常に明るく軽やかだったのは、ゲストの呉さんが終始笑顔だったからかもしれません。

イベント終了後、呉さんに改めて問うたのは「ナイフで傷つけられても、どうして傷つけ返さないでいられのですか」
それは「ナイフの傷つけ合いの連鎖を止めたい、こえてきたいという意思である」と言い切った強さが、呉さんのその柔らかな佇まいを支えていたのだと感じました。

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次回11/24(水)開催となるSee the dofferenceのテーマは、「みんな、いつかは障がい者!?正解のない答えを探して」ぜひお楽しみに!

運営スタッフ 花宮香織(はな)