人生アンサンブル_04 舞台役者の卵がみつけた、様々な立場がうむ人のエネルギー | NPO法人コモンビート
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人生アンサンブル_04 舞台役者の卵がみつけた、様々な立場がうむ人のエネルギー

ダイバーシティ&インクルージョンは、わたしとあなたのこと──。コモンビートは、「わたしとあなた」という一人ひとりを起点に、個性が響きあい、多様な価値観を認め合える社会を目指して活動しています。こちらの「人生アンサンブル」は、コモンビートのメインの活動であるミュージカルに参加者がどのような思いで関わり、そこから仕事や日常生活においてどんな変化が起こっているのかをコモンビート広報室がお届けするシリーズです。

今回は、「再開記念ミュージカル」に参加した、「ぎょる」に登場してもらいます。コモンビートのミュージカルプログラムでは、年齢、職業、性別、国籍などが異なる仲間が、1つの作品をつくります。その過程で、お互いの個性や価値観を認めあう方法を、その人なりに見いだしていきます。さて、ぎょるさんは何を見つけたのでしょうか?

大学生が、舞台で社会人とまじりあう

ぎょるさんは、舞台が大好きな青年です。現在、大学に通って、舞台役者をめざしています。彼にとって、様々な背景の大人が集まり、お互いを知りあいながら1つの作品をつくるプログラムは役者として新しい経験ができる魅力的な場でした。「今までにない新しい化学反応が、自分の中で起こるのでは?」と期待を膨らませて、コモンビートの門をたたきました。

ミュージカルプログラムに参加する仲間は、本当に様々な理由で申し込みます。「歌うことが好き」「いま自分が置かれている環境に何となく違和感がある」「新しい視点を得たい」などがありますが、ぎょるさんの場合は「舞台役者として学びたい」というのが動機でした。

期待を裏切らない、カオスの度合い!

さあ、期待を膨らませて参加したぎょるさんは、どのような感想を抱いたでしょうか?彼に聞いてみると、にこっと笑いながら「いい意味で期待を裏切らなかったですね。とにかくカオスで、『舞台を楽しむ』という本質を思う存分に味わいました」と答えてくれました。印象に残っていることを聞くと、となりのトトロの「さんぽ」にあわせて、大人たちが普通にスキップを始めた場面を教えてくれました。それは学生にとって新鮮な光景で、きっと普段は真剣に仕事をしているだろう彼女や彼が、所属や肩書などに関係なく、楽しそうに1つの場をつくっていたそうです。

ミュージカル「A COMMON BEAT」という作品は、「異文化理解」を一つのテーマにしています。その制作過程においても、異なる背景や価値観をもった出演者同士が、その違いを認めあって協力することが大切になります。舞台役者としての学びを目的にしていたぎょるさんですが、学生も社会人もそれぞれが普段の所属や肩書等にとらわれることなく、のびのびと自分を表現している様子に触れて、コモンビートの特長を実感したそうです。プログラムに参加する時に、団体のビジョンやプログラムの特徴は言葉で説明されていましたが、自分の体感で、表現を通じた多様性の実現を目撃したのは大きかったようです。彼の言葉を借りると、それは様々な立場が生む「人のエネルギー」だそうです。

人のエネルギーは、役者の卵をどう変えた?

人のエネルギー、気になりますね。もう少し具体的に教えてもらいましょう。少し長いですが、ぎょるさんの言葉を書かせてもらいます。

「僕の場合、大学で普段から芝居をしているので、舞台に立つのは当たり前。でも、コモンビートにいま一緒に出演している他の人たちは、違います。プログラムが進む中で、『一人ひとりがどんな想いで、この作品に参加をしているのか』と聞くと、本当に様々な答えが返ってきました。それを聞くだけで、その人の考え方や生き様が垣間見えて、刺激を受けることができました。これが『人のエネルギー』で、普段の学校生活やコミュニティではなかなか感じられないものです。この非日常を経験できたのは、本当に貴重でした」

この経験から、ぎょるさんの見方、考え方は、がらっと変わったそうです。肩書や役職などにとらわれずに、1人ひとりと向き合って話すと、その独自の具体性や、そこから得る発見があり、その人らしさが染み出す。そんな何ものにも代えがたい体験によって、人との向き合い方が変わったと教えてくれました。コモンビートのミュージカルプログラム以外の人に会っても、固定した視点で話しを聞いたり意見を言ったりするのではなく、「こういう角度から魅力が見える」など向き合い方が豊かになったそうです。

舞台役者として、多様性をいかす人として

ぎょるさんは、舞台役者として経験を積むだけではなく、いち個人としての自分の変化を感じることができ、また、多様性をいかすことの意味も体感として吸収しました。コモンビートのプログラムに参加したことで、「日常を生きる足がかり」を得られたそうです。このことについて、コモンビートのビジョンとつなげながら、少しつけ足させてください。私たちは、ビジョンのなかで次の言葉を大切にしています。


私たちが表現活動にこだわるのは、
それが「ありのままの自分」に戻る体験だからです。
自分をありのまま受け止めることは、
他者との違いを受容する力になる。

それは、ひとりひとりが個性を発揮し、
多様で調和した社会を形づくる大切な一歩だと
私たちは考えます。


ぎょるさんは、この言葉で伝えたいことを、コモンビートの理事長(りょう)の話からも感じていました。りょうは、よく「ミックスジュースではなく、フルーツポンチを創りたい」と言います。どちらにも良さがあるのは前提ですが、フルールジュースは混ぜ合わせることで元の素材の姿かたちがなくなり一緒くたになってしまいます。対して、フルーツポンチでは1つひとつの果物の個性(違い)はそのままに、一つのハーモニーが奏でられます。ぎょるさん自身も、「多様性と聞くと難しそうだけど、それぞれが自分らしくあり続けるという視点を入れれば、難しくありません」と話してくれ、「コモンビートのミュージカルは、そんな場が自然に作られていますね」とまとめてくれました。彼が感じた鼓動を、これからもつないでいきます。


いよいよ3年ぶりに関西・吹田メイシアターにコモビの舞台が帰ってきます。お久しぶりの方・初めましての方、全員が楽しめる舞台を準備してお待ちしています。「こんな時代だから」と色々諦めの多い世の中ですが、私達はそんな逆境の中最高の90分間をお届けします。ご覧下さった皆さんに最大級のエネルギーが届きますように!


最後にそう語ってくれたぎょるさんをはじめとした多様なキャストが出演する、ミュージカル「A COMMON BEAT」再開記念シリーズ・関西公演は、10月2日(日)に本番を迎えます。ぜひ、ひとりひとりの物語を味わいに、劇場にいらしてください