ダイバーシティ&インクルージョンは、わたしとあなたのこと──。コモンビートは、「わたしとあなた」という一人ひとりを起点に、個性が響きあい、多様な価値観を認め合える社会を目指して活動しています。今回の「人生アンサンブル」では、コモンビートのメインの活動であるミュージカルに参加者がどのような思いで参加し、そして、そこからそれぞれの暮らしや人生の物語にどんな変化が起こっているのかをコモンビート広報室がお届けします。
ずっと一人で過ごせるなら、その方がいい
今回の主役は、オーストラリアから来日し、働いている「エマ」です。異国の地である日本に来て「さぁ頑張るぞ!」というときに、コロナ禍が起こりました…。「こんなはずじゃなかった」という不安が高まるなか、偶然コモンビートのミュージカルに出会いました。オーストラリアにいる頃から、ミュージカルが大好きなエマさん。「これは、もうやるっきゃない!」と即参加を申し込みました。
でも、もともと人と関わるのが苦手な性格。もし一人で過ごし続けても許されるなら、いつまでもそうしていたい。本気でそう思っていました。しかも、不慣れな日本なら余計に。でも、それは、コモンビートのミュージカルに参加し、少しずつ彼女自身が変わるまでの間でした。
誰も自分をわからないし、自分も人がわからない
ミュージカルがとにかく好きで、周りに知っている人が少ない日本で、しかもいきなりのコロナ禍が重なり、とにかくコモンビートの門を叩いたエマさん。実は、オーストラリアにいる時から「なんか、自分は周りと違う」「自分は異質な存在なのかな」と感じていました。そんな彼女が来日当初に感じていたこととは──。
そう、「日本にいるオーストラリア人」として、基本的に周りと違うので、誰も自分を理解してくれないだろうと思っていました。そして、自分も他人を理解しようとはしていませんでした。そんな中でもコモンビートのミュージカルに飛び込んだエマさんには、何か言葉にできない期待があったといいます。
感情、歌、踊りは、多様性を認め合うトリガー
ミュージカルが大好きなエマさんは、「きっと、こういう感じだろう」とミュージカルの稽古に対して予想をしていました。しかし──。
ぜんぜん違う!コモンビートのミュージカルでは、「生き方」「価値観」など、とにかく徹底的に自分自身に向き合うことを求められました。答えがない中、「自分とは何か?」「どうしたいのか」「それって、周りはどう思う?」と本気で悩み、深く考えさせられたそうです。
エマさんは「今、私は成長している」と心から感じているそうです。だって、一生懸命に歌い、踊ってみると、周りにいるさまざまな他人と共通点があることに気づいたから。もっと言えば、歌を通して、また一緒に踊ることで、人とのつながりを、これまでの人生で一番強く感じたから。彼女が一番成長していると思うのは、「知らない人や、性格が合わない人にも、優しい目で見て、仲間として向き合えるようになったこと」だそうです。
もちろん、コモンビートに関わるみんながみんな、こうある訳ではありません。こういう関わり方もあり、そうじゃないのもあり。関わる一人ひとりによって、そこには異なるストーリーが生まれている。それが響き合っているのが、コモンビートの舞台です。
お題目ではない、みんな違って、みんないい
さあ、この物語もそろそろ終盤です。エマさんに、コモンビートのミュージカルに参加して、何を感じているのかを改めて聞きました。彼女の第一声は、「この人も、あの人も、もしかしたらコモンビートに関わっていたかもしれない」という前提でした。そういう気持ちで人に向き合ってみると、少し苦手な人でも、これまでよりは余裕をもって接することができるようになり始めたそうです。
そう、エマさんは、本当の意味の「みんな違って、みんないい」をミュージカルを通して学び、彼女の生活、人生に生かしているのです。少し照れながら、「この言葉の意味を、初めて分かったかも」とぽつりと呟いていたのが印象的です。
もちろん、人がそんなに急に変わることはありません。でも、彼女は、自分の中で何かが変わるきっかけを間違いなくつかんでいます。だから、“Thank you so much for giving me this chance”と思わず母国語で嬉しそうに伝えてくれました。
「最初、未経験者だけで、しかも短期間でミュージカルを本当に作れるのか不安でした。でも、一緒に頑張る仲間と協力し、助け合い、時には引っ張られながら一つひとつに向き合っているので、とてもいい舞台ができる自信があります。
多様な仲間がいるからこそ、今の社会にとって価値のある作品にできそうです。稽古時間は限られていますが、悔いのないよう、思いっきり頑張っていきます!」
そんなエマさんをはじめとした多様なキャストが出演する、ミュージカル「A COMMON BEAT」再開記念シリーズ・関東公演は、7月16日(土)に本番を迎えます。ぜひ、ひとりひとりの物語を味わいに、劇場にいらしてください