人生アンサンブル_12 作品と自分がリンクしたーー違いとの出会いが広げる自分の可能性 | NPO法人コモンビート
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人生アンサンブル_12 作品と自分がリンクしたーー違いとの出会いが広げる自分の可能性

ダイバーシティ&インクルージョンは、わたしとあなたのこと──。コモンビートは、「わたしとあなた」という一人ひとりを起点にして、個性を響き合わせ、多様な価値観を認め合うことを目指しています。主要な活動である100人100日ミュージカルプログラムの参加者が、具体的に何を経験し、学び、そして仕事や人生にどんな変化を起こしているか。「人生アンサンブル」では、参加者の生の声をもとに、コモンビート広報室がお届けしています。


作品と自分がリンクする

今回ご紹介するのは、保育アーティストで、フリーシッターの「ちぇよん」こと文彩瑛さん(以下、ちぇよん)です。今回、取材で初めて保育アーティストについて知り、調べたところ、子どもたちの遊び歌を作るなど幼児教育に欠かせない存在でした。ちぇよんは、専門課程で学び、幼稚園教諭のキャリアがあるなど、シッターとしてもプロフェッショナル。確かに、教育と表現は近いような気がする…。彼女は、なぜコモンビートのミュージカルに関わったのでしょうか?

「4年前、友達がコモンビートのミュージカルで舞台に立つのを観客として見た時、何だか自分にも大きな達成感があったのを今でも覚えています。その友達が、『コロナ禍が明けて、コモンビートがミュージカルのキャストを募集しているよ』と教えてくれたんです。」表現も教育も好き、その両方を愛する彼女は、コモンビートのミュージカルにすぐ申し込み、舞台に立つことを決めました。

保育アーティストとしての活動の様子

ここで、彼女の生い立ちを少しご紹介します。ちぇよんは、高校まで朝鮮学校に通い、在日社会で育ちました。文彩瑛(むんちぇよん)という本名と、小山彩瑛(こやまあやえ)という日本名を持っており、今は、「むん先生」「ちぇよん」と呼ばれて過ごしています。

民族性や歴史はその人を構成する大事な一要素ですが、たまに「日本語が上手だね」「どこから来たの」というような言葉が日本育ちの彼女に投げかけられます。そんな彼女にとって、コモンビートのミュージカル作品は象徴的な内容でした。4つの大陸に住む人たちが、それぞれに閉じて暮らしていたところ、別の大陸の人に出会って、それぞれの間の「違い」を起点に諍いが始まり…。「在日という存在や自分のことをみんなに知ってほしい」という想いが心の奥底にあったというちぇよんは、どのようにミュージカルの仲間と過ごしてきたのでしょう。

背景が違う人がいて当たり前な場、での自分

ちぇよんは、「コモンビートに参加しなかった自分を想像すると、ちょっと怖い」と語ります。それは、これほどまでに多様な人たちがいて、考え方もそれぞれで、でも打ち解け、一緒に何かを創れるという場が、コモンビートにはあったからです。在日社会には、繋がりは強いがコミュニティが狭い、という一つの側面があるといいます。これまで出会ってこなかったような人や考えがあると知ったこと、そして、そんな人たちから「ちぇよんってこうだよね」という新たな自己理解をもらえることが嬉しい、と彼女は目を輝かせて語りました。

また、ちぇよんは、コモンビートのミュージカルに参加するにあたり、在日社会で育った自分について伝えていこう、と決めていました。本名と日本名があること、どこか疎外感があることなど‥。では、勇気を持って打ち明けた彼女に対して、仲間はどんな反応をしたのでしょうか?
誰も、そのやりとりを揶揄しない。これまで幾度となく経験してきた、異質なものに向けられる詮索や、居心地の悪い「特別扱い」をされることがなかった状況に、彼女は、いい意味で拍子抜けしたといいます。

もっと拡がりが出て、可能性が生まれる

間近に迫る、公演本番──。ちぇよんに、今の気持ちを聞きました。すると、「人が輝いて見える舞台にしたい。戦争から世界平和へと変化する物語に触れて、少しでも心に残って欲しい。特に子どもたちには、何かとても大切なものに触れた、という感覚が芽生えてほしい」と声に力を込めて語ってくれました。

コモンビートの舞台には、視覚障害がある人も、車椅子に乗っている人も、人見知りの人も、人の前に立つのが好きな人も、立っています。4年前に舞台を観て達成感を得たちぇよんは、今はキャストとして、そして、もしかしたら将来のスタッフとして、「今後コモンビートに、色々な立場の人が、さらに参加できるようにしたい」と考えています。

なぜなら、プログラムを通じて、たくさんの違いに出会い、そこから自分の様々な側面を知り、「今後こういうこともできる」「あの人と一緒にあんなこともできるかもしれない」と、これからの将来に手応えとワクワクを感じているから。自分の可能性が拡がるような機会を、より多くの人に届けられるようにしたい、というのは、幼児保育の専門家として、言葉の端々に愛がにじむ、ちぇよんらしい視点です。キャストから盛り上げる側へ、こういう関わり方もすてきだと思います。


ちぇよんをはじめとした個性豊かなキャストのメッセージを舞台で受け取りにきてください!8月の東京公演でお待ちしています!

■ミュージカル「A COMMON BEAT」第57期東京公演

日程:2023年8月19日(土)・20日(日)
会場:北とぴあ さくらホール
詳細:https://musical-acb.com/
観劇サポート(音声ガイド・字幕)あり