「違い」と出逢う冒険へ! ーある新人航海士の手記ー 第1章 第2話「コミュニケーションは大気圏をも越えて」 | NPO法人コモンビート
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「違い」と出逢う冒険へ! ーある新人航海士の手記ー 第1章 第2話「コミュニケーションは大気圏をも越えて」

『Diversity Journey』とは、「違い」を切り口に「わたし・あなた・社会」に向き合い、対話とアクションを通して「多様性への身だしなみ」を学ぶ、1ヶ月間のオンラインプログラムです。

参加者の方は船の乗組員として「多様性という大海原に繰り出す船旅」というワクワクする世界観の中へ飛び込んで学ぶことになります。

そんな旅の内容を伝えるのは、長期インターン生・ジュン。
彼女はこの船の新人航海士として乗船し、船内で起こったことを記録しているようです。

ではさっそく、今回は10月22日(土)の旅について書かれた彼女の手記を一緒に覗いてみましょう!


【8日目】

2022年10月22日(土)

▶︎DJ Radio at 9:40

今日でこの旅も8日目。朝が恐ろしく苦手な私でもこの船の上では不思議と目が覚める。新しいことを探したいという好奇心が私を起こすのかもしれない。
今回は何やら特別な場所へ船が向かうようだが・・・どこへ行くのだろう。
それを楽しみにしながら朝のラジオを聴く。

前回の日誌にも書いた通り、このラジオでは対話の場が設けられている。
この対話は乗船者同士で行うだけでなく、ラジオパーソナリティの王健治(ケンジ)さんとすることも可能だ。
彼が語る彼自身のマイノリティ性には、聴き手の私たちには簡単に想像することができないようなーー例えば、日本国籍を持たないという理由だけで日本で部屋が借りられないといったーー出来事が付き纏っている。

そんな経験をすることがないいわゆるマジョリティ側の人間は、マイノリティの方を取り巻く出来事やその属性にどう向き合えばいいのか、どう理解しようとすればいいのか。
私たちが頭を悩ませていると、ケンジさんは爽やかに答えを出す。

「その本人が個人としてどう思っているか、なんじゃないかな」

まさかこの言葉が今日のキーワードになるとは、この時点でまだ誰も知らない・・・。

▶︎異文化探査 at 10:30

ラジオを聴き終え、今日のメインイベントに入っていく。
このDiversity Journeyは船旅。船といえば海上を進む乗り物。
しかし、今回は特別に「宇宙船」にフォルムチェンジ!
「なんだって!?」
と考える間も無く、ばびゅーんっ!と銀河の海を渡った先で、私たち乗船者は船長からあるミッションを与えられた。

「この宇宙のとある場所にいる、とある人々を調査してください」

とある人々、その名も・・・とここで名前を言ってしまうと皆さんはスマホで検索をしてしまうと思う。
それでは面白みに欠けるのでここでは仮として「◯△☆星人」とさせていただく。
まさに、未知との遭遇。

私たちは2つのグループに分かれ、通称「◯△☆」さんに様々な質問をぶつけてどのような文化をもっているのかを調べることに。
地球人6人対◯△☆さん1人。
この調査の行方は一体どうなるのか・・・!

▶︎異文化探査 at 12:00

◯△☆さんへの質問を終え、異文化についての報告をして盛り上がる中で私はある重大なことに気がついた。

「◯△☆さんを属性ではなく、個人として扱ったか?

・・・いや、扱っていなかった。
私はそれにハッとして反省と羞恥の沈黙をした。

調査対象として見ていたために挨拶などの基本的なことをしていなかったのではないか。
初めて聞く文化の物珍しさで相手のプライベートに関わる失礼な質問をしていなかったか。
その気づきと一緒に、朝のケンジさんの言葉が脳内でリフレインされる。

「その本人が個人としてどう思っているか、なんじゃないかな」

そうだ。今思えば私は、彼ら、彼女らにその人自身の名前を聞くことすらしていなかった。
「◯△☆」というのはあくまでも属性の名前だ。
私が海外へ行って「日本人さんは〜」とずっと呼ばれていたら嫌なのと同じで、相手もずっと嫌な気持ちだったのかもしれない。

コミュニケーションをする相手のアイデンティティが日本だろうと、海外だろうと、宇宙だろうと、「相手を相手として見る」という根幹は何も変わらないはずだ。

これを読んでいるあなただって、目の前にいる相手をその人自身として捉え切れていないかもしれない・・・。

▶︎船内図書館 at 12:40

冒険を終えて束の間の休憩に入った後でも、私たちは宇宙で出逢った人々の話題でいっぱいだった。
「相手の立場になって」とはよく言うものの、実際にコミュニケーションを取る時に簡単にできるかと言われたら自信がない。銀河の彼方で異文化を持つ方々に自分がしてしまった対応を振り返るとなおさらだ。

となると、これが身体的な差を持つ相手に対してだったら・・・
そんな可能性への想像を広げるため、再び船は動き出す。

動き出して行き着いた先は、本の中の世界。
そこで今回紹介されたのはこちら

この『認知症世界の歩き方』では、実際に認知症のある方にはどのように世界が見えているのかが書かれている。
自分の目で見えないものを、相手の目を通して見てみることでコミュニケーションに繋がるのだ。

では、耳が聞こえない相手の場合は?
そこで登場したのが次の本、『みんなが手話で話した島』。
この島では聴覚障害のある人が多く見られたが、聞こえる聞こえないに関係なく島のみんなが手話を使って話していたそうだ。

司書の花宮香織(はな)さんは自分の眼鏡を外すと、あることを話し出した。
「私は視力が弱いから、この眼鏡という道具がなかったら生活に障害がある。でも障害者としてではなく生活できているのは、視力を矯正する道具が比較的誰にでも簡単に手に入る社会の仕組み、またその上で、眼鏡をかけていても偏見を受けない社会の慣習があるから」と。

だとすると、手話という身体言語の発明は、私たち人間が誰かとコミュニケーションを取りたいという精神的な進歩の現れなのではないだろうかと私は思った。

三日目を終え、この前までなんとなく見ていた星空で私は◯△☆星人の星を探していた。海の生き物の数だけあると思っていた「違い」は、今や私の中で星の数だけある「違い」に膨らんでいる。
そんな感覚を抱きながら私は客室内で他の乗船者たちと談笑をし、時に真剣に話し合う。
旅もそろそろ折り返し。ここからは自分のアイデンティティと向き合わなければならない予感がしている。
遠くで、雷が鳴った。


うーむ・・・ふむふむ・・・なるほど・・・。
他者を理解しよう!と口で言うのは簡単ですが、面と向き合った時にアクションに移せるかは難しいですよね。
ですが相手はどのような人なんだろうかと知ることで、自分自身のことも知っていくことができそうです。

え?自分のアイデンティティについてなんか考えたこともないよって?
きっとそれは考えなくても生きてこられた側の属性だから・・・かもしれません。
この言葉にハッとした方もそうでない方も、これからの冒険をどうぞ最後まで見届けてください。

このDiversity Journeyのプログラム内容は、団体Twitter・インスタグラムストーリーでも随時情報発信中!また、次回4期プログラムの参加者募集も始まっています。
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