NPO法人コモンビートの代名詞とも言える、ミュージカル「A COMMON BEAT」プロジェクト。これまで全国で、様々な年齢・職業・個性の市民6600人以上が参加したこの舞台が、新型コロナウイルス感染症の影響による約2年間の休止を経て、今年ついに帰ってきます!
「あらゆる違いを越えて、共通の鼓動を奏でることはできるのか」
ミュージカル再開にあたり、作品が持つこのテーマから団体が込める思いまで、コモンビートのスタッフがリレー形式でお伝えします。
この問いかけに答えるのは難しい
理事長のりょう(安達亮)です。2004年からこの作品を上演し続け、「異文化理解の大切さ」と「平和へのメッセージ」を社会に届けてきましたが、この問いかけに答えるのはとても難しいですね。「できる!」と言いたい気持ちと、「でも、現実は…」という気持ちとが織り混ざって、なんとも言い切れない複雑な気持ちになる人も多いのではないでしょうか。
多様さが顕在化していく社会に対して必要な問いかけ
社会は今、もとからあったが見えてこなかった人や価値観の多様さが、どんどん顕在化していっていると思います。社会も制度もその多様化に追いついていないですし、そのギャップからさまざまな社会課題が生まれています。社会課題を解決するために多様化を止めることは現実的ではないので、社会が追いついていくしかないのです。
そのために私たちがミュージカルを通して、この問いかけを社会や市民に投げかけていくこと、そして受け取ったひとりひとりがこの問いについて考えることは、とても大切だと感じています。
コモビジョン(D&Iとウェルビーイング)
コモンビートは長年、この作品を通して「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」を社会に推進してきました。コモビジョンにおいても「地球とひとりひとりのウェルビーイング(Well-being)」を掲げ、違いを活かし合うことで、ひとりひとりがより良い状態になることを目指しています。
違いを活かし合うためには、ひとりひとりが持つ「違い」そのものを表現する必要があり、自分のことをオープンに伝え、相手のこともオープンに受け止めていく力が必要です。コモビジョンのストーリーには「必要なのは 少数の優秀なリーダーではなく『ありのままの自分』を受け入れた たくさんの『わたし』。」と書かれています。また、「『違い』の中にこそ『共通の鼓動』はある。」とも書かれています。
ありのままの自分を表現し、お互いに違っているのがあたりまえで、そこに共通の鼓動を見出していくことこそが、多様化していくこの社会に最も必要なことではないでしょうか。(コモビジョン)
この問いの答えに正解はない、向き合い、信じ続けるもの、モヤモヤも含めて
この問いの答えは、それぞれが向き合って答えを出すものであり、またその時々で答えも変化するものなのかなと思います。「できる?できない?その理由はなんなの?」と追求し、正確な答えや理論的に通じる答えを求めるものでもないと思いますし、答え合わせをするものでもないと思います。そう言う意味では「信じる」ものであり、実現のために向き合い、努力し続けるものなのかなと感じます。
ダイバーシティ&インクルージョンって、あいまいさを許容することでもあるので、答えをくっきりぱっきりすることって難しい。そんなモヤモヤとも付き合いながら進んでいくものなのではないかなと思っています。
そして舞台へ
今回の再開記念公演の舞台に、私自身も立つことにしました(2005年以来17年ぶり)。2年間の休止期間において、オンラインに活動の場を移したり、ビジョンを見つめ直したり、あの手この手で組織を牽引してきました。そうして制限や窮屈を創意工夫で乗り越える努力を続けてきましたが、「好きなことを自由にやれない」ということに対しては、私自身も鬱憤が溜まってしまいました。再びこの活動を牽引していく身として、自分自身も心を動かしていかねばと思い立ちました。事務局スタッフたちに特に相談せずに、いきなりキャスト参加の申込をして、局内はざわついていましたが(笑)、気持ちを伝えて理解をしてもらいました。
実際に今、ミュージカルの練習に参加して、歌って、踊って、表現していますが、とにかく心が喜んでいます。コロナ禍の制限に慣れてしまいすぎて、自然と忘れてしまっていたこの心が喜ぶという感覚や感情を取り戻すことは本当に大切なことだなと感じています。再び心躍るキャストたちが舞台で表現する姿と、今だからこそ伝えたい「異文化理解の大切さ」や「平和へのメッセージ」を精一杯届けたいと思います。
ぜひみなさんも、コロナ禍で少し遠ざかってしまった舞台芸術を鑑賞しにきていただき、来て観て感じて、心を動かしていただければと思います!7月16日、会場でお待ちしております!(再開記念シリーズ 関東公演)