自分の感覚を信じることから始まる。 See the difference〜「普通の人」ってどんな人〜開催レポート | NPO法人コモンビート
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自分の感覚を信じることから始まる。 See the difference〜「普通の人」ってどんな人〜開催レポート

3月23日(水)、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)をテーマに、違いを知り、違いと出会い、違いとつながっていくための「See the difference」の第11回が開催されました!今回のゲストは、ブラインドサッカー選手の加藤健人さんです

ブラインドサッカーの「普通のサッカーボールとはちょっと違うボール」にみんな興味津津!
競技の説明もしていただきました!

17歳頃から遺伝性の病気で徐々に目が見えなくなったという加藤さん。光自体は感知できるということで、例えば、今が朝なのか夜なのか、目の前に人がいるかどうかも「なんとなく」わかるそう。それって実際どのような状態だろう?ということで、その場で参加者みんなで体験してみました。

加藤さんの指示に従って、顔や手の位置を変えて、見え方を試してみました。

目を閉じて、顔の前に手をかざすと、部屋の中でもライトがある方向とそうでない方向で、光の量やまぶたの裏の色が変わるのが感じ取れます。また、顔の前で手を振ると、光がちらついたり、小さな風が起こることで、そこで何かが動いていることが感じられます。

ただ、中には、その違いを全く感じない人もいる。ひとえに「視覚障害」と言っても、全盲、光覚、弱視など、様々な見え方があることを、冒頭から体験を通じて教えていただきました。

「多様性」って言葉って必要?

加藤さんご自身の「見え方」やブラインドサッカーの競技説明が終わった後に、モデレーターも交えてさっそく本題に入ります!

「多様性という言葉がある限りは、多様性のある社会にならない。それが当たり前の社会になって、この言葉も自然となくなればいい。」という加藤さんのご意見は、以前のSee the difference 「〜インクルージョンって必要?森が教える多様性〜」の回でゲストの小野さんが伝えてくださったことと通じるかもしれません。当たり前に「良いモノ」とされている「多様性」や「インクルージョン」を疑ってみること。世の中で普通とされていることに疑問を投げかけること。トークの冒頭からさっそく、加藤さんのそんな姿勢が伝わってきました。

Q1.視覚障がい者のイメージって?

「家族や友達に、視覚に障がいがある人がいる人?」という加藤さんからの問いかけに、参加者の中で数名から手があがりました。続く質問は、「みなさん視覚障がい者にどんなイメージがありますか?」

実際に身近にはいなくても、私たちそれぞれが視覚障がい者に対しての「イメージ」を持っています。彼らの一日を想像し、どんなことができるかできないかを考えてみよう、ということで、参加者は少人数のグループトークタイムにうつりました。

参加者の「視覚障害に対するイメージ」
ー視覚以外の感覚に優れていそう
ー料理とか難しそう
ー表情が変わらないから、会話をするのが難しそう
ー蛇口の青と赤が判別できないと、水とお湯の違いがわからなくて大変そう

参加者からあがる様々なイメージに、加藤さんもコメントを返します。

「視覚障がいの人は耳が優れている」のではなく、耳を使うことが多いだけ。視覚障がい者でも、料理が好きな人やよく作る人もいる。自分は料理しないけど、それはただやろうとしてないだけ(笑) 視覚障がい者だからって、みんながブラインドサッカーができるわけではなく、結局、その人がサッカーが好きかどうか、運動が得意かどうか、やりたいかどうか、その人次第だよね、というお話には、参加者のみなさんもうなづいていました。

水とお湯の蛇口の配置には規則性がある場合が多いとのこと。では、トイレの男女の配置はどうだろう?そういえば、今はトイレに様々なボタンがあってわかりづらいと聞いたことがある!そのように参加者も、自分たちの普段の生活から様々なケースを想い浮かべて話が展開していきました。

Q2.普通の人ってどんな人?

加藤さんにとっての「視覚障がい者」のイメージは、中学校にあった特別学級のイメージでした。自分とはちょっと違う、できれば関わりたくない、障がい者=何もできない、というイメージは、自身が当事者になったときに、自分も周りからそう思われるのではないか、という恐怖として返ってきたといいます。

同じ境遇の人が身近におらず、誰に相談していいのかわからない。自分なんてもう必要ないんじゃないか。普通に見えるようになりたい、普通に戻りたい。そう思っていたという加藤さんは、「普通」というものに疑問を抱くようになったのでした。

参加者の「普通」のイメージ
ー自分の物差しに収まっていること
ー相手にも相手の物差しがあるとわかること
ー統計学的な、平均、アベレージ
ー普通は多数派
ー所属するコミュニティによって「普通」は変わる。
ー普通を望むこともあるし、普通じゃなくなりたいこともある。
ー普通がないのが普通。

「普通」は、平均や基準という言葉とも言い換えられます。本来一人ひとり違うはずのものを、基準化しようとしていること自体が、そもそも無理なのではないか。

そう考えると、自分にとっての「普通」とは、唯一無二の自分自身のこと。まずは、人と比べたりする前に、自分自身の感覚を信じてあげたらいいのではないか。そんな初めて聞く「普通」に、参加者も聞き入っている様子でした。

「普通」に隠れている、無意識の偏見

イベント最後に、加藤さんから大事なメッセージがありました。

今日の話を、「視覚障がい者の話」としてではなく、加藤健人という一個人の話として受け取ってほしいこと。「障がい者理解」という言葉はよく使われるけど、自分のことを視覚障がい者の象徴としては受け取らないでほしい。一人ひとり違うはずの人間に対して、「障がい者」や「普通」という言葉を当てはめようとしていること自体が、無意識の偏見をはらんでいませんか?



イベント最後は、それぞれが踏み出すアクション宣言!

会が終わった後に、参加者から加藤さんに質問がありました。「見えない状態になって落ち込まれたとお聞きしましたが、そこからどう前を向けるようになったのですか。」

「ブラインドサッカーと出会って、“やればできる”と思えたんです。はじめなければはじまらないって。だから、まずは何でも挑戦してみること。できるかできないかは、やってみないとわからないから」そう笑って話す加藤さんの言葉は、参加者にもスタッフにもとても強く響きました。

ゲストの加藤さん、参加者のみなさん、学びある時間をありがとうございました!

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次回の4/6(水)開催のsee the difference のテーマは、次世代議員と考えるパートナーシップ制度と「家族のかたち」です。ぜひお楽しみに!

運営スタッフ 花宮香織(はな)