コモンビート関西の芝琢也(たくや)です。
11月23日、24日に、大阪府枚方市の農園「杉・五兵衛」さんにて開催された「楽農まつり2013」。
今年も、私達コモンビートはそこでパフォーマンスをして大いに盛り上げ、一緒にお祭りをつくってきました。
その様子をレポートさせて頂きます。
今回の舞台となる農園「杉・五兵衛」さんとコモンビートの繋がりを紐解くと、神谷宗孝(タイガー)さんが、100人100日ミュージカルと並行して立ち上げた「楽×農ぷろじぇくと」と言う企画がそもそもの始まりです。『土から学び、農で遊ぶ』というコンセプトのもと、農を通して、人として大切なものを楽しみながら学んでいこうという『楽×農ぷろじぇくと』。「自分たちで種を植え、育て、収穫し、本物のお祭りをつくりたい!」っという想いを持って、コモンビートの他に、ここ杉・五兵衛に集まる人たちと毎年秋に一緒になってつくってきたのが、この「楽農まつり」です。
コモンビートは毎年パフォーマンスなどを中心に、この秋の収穫祭を彩り、盛り上げてきました。
5年間、毎年2日間行われているイベントで、これまで一度も雨天がない(ちなみに今年は翌日は大雨)というのは、お天道様もその行いを讃えてくれているのかもしれません。そんなあっぱれな秋晴れのもとパフォーマンスは始まり、自然界にはまるで似つかわしくない総原色のTシャツを着た集団がぞろぞろと入場してきます。
実は、わずか10分ほど前に、枚方市長へとお披露目するために、急遽パフォーマンスの時間や回数、内容が変化するという無茶ぶりを受けたばかりですが、その表情にはいささかの同様も不安も無い………はずです(笑)。気まぐれな自然に大きく影響されるのも農業の特徴、そして醍醐味でしょう。
さらに季節は秋、変りやすさに定評のある秋の天気です。
楽農の収穫祭である以上、これくらい柔軟に対応しなくては……ね。
今回お披露目するナンバーの幕開けは、まずはコモンビートの中では定番中の定番、「かけがえのない仲間たち」
奇しくも、ちょうど一月前に26期公演にて演じたばかりのナンバーです。
もちろん、その時の規模とは比べようもありません。
私達キャストも26期では100人でしたが、今回はわずか30名弱。
お客さんも、およそ1800名いた26期公演に比べると、今回は100名にも満たない程度です。
それでも、このパフォーマンス、そして私たちの気持ちに、いかほどの遜色のあろうはずがありません。
まるで……まるでいつもとは違うんです!
もっぱら室内で披露することの多い私たちの演目ですが、今回ばかりは屋外、それも大自然の中での発表となります。
四方八方からスポットで照らされたステージ上とは異なり、今回の世界には、すぐ眼前へと広がる、見渡すべき大地があり、丘に吹く風があり、僕らの全てがここにあるんです!
上に伸ばした両手が目指す先はシーリングライトでも2階席のお客さんでもない、そう、大空!
さらにはその手を前方へと伸ばせば、もう手が届きそうな距離……ではなく、実際に手が届いてしまう距離!
指先が触れてしまう距離にお客さんが座っている!
それも太陽という舞台照明が見境なしに客先まで照らした結果、イキイキとした表情がそのまま私達に跳ね返ってくる!
それもご家族で来園されている方々が多いゆえに、子どもたちのキラキラと煌く笑顔が!
コモンビーターなら誰しもが何回も経験しているであろうおなじみのナンバーでしょうが、今回の楽農プロジェクトに向けては、決して練習量は充分といえるわけではありません。
100日を過ごしてきたメンバーで作るわけでもなし、急ごしらえのメンバーで作った大陸であるがゆえ、細かい動きなどなどまるで統一されていないかもしれません。
それでも、目で見て、耳で聞いて、そして肌でこの自然を感じるままに、野性的本能、動物的本能に忠実に、アウトプットする、発信する、体を動かす、ビートを刻む、そして声を上げる、そう、歓喜の声を!
人間としての表現活動の根幹ともいうべき、ありふれた表現かもしれませんが、「考えるんじゃない、感じるんだ」というその姿勢のままに演じることが出来たのも、食と農という人間の本能に根ざしたこの楽農祭りならではかもしれません。
そして続くナンバーは、今年の4月に京都さくらよさこいでお披露目した、よさこい演舞です。
これはもともとは京都の屋外で行った演舞でありますが、京都の町中で行うのと今回の自然の中で行うのでは、またひとつ違った味わいがありました。
さらに、合唱部「奏MENY」の皆様が、アカペラにて、「崖の上のポニョ」を披露してくださいました。
ご家族連れということで小さなお子様が多いことを見越しての選曲だと思いますが、子どもたちにも大好評だったようです。
まさにパフォーマンスを行なっているすぐ隣には、小高い丘…というか崖が存在して、その「崖の上」から鑑賞してくれたお子さんたちもいらっしゃるのですから(笑)
そして今回の「楽農祭り」プロジェクトの練習においてはメインとなったダンス、「カカオ」です。
これはアフリカのカカオ農家の生活を歌った演舞ですが、今回の参加者の多くにとっては、初めてのダンス。
「A Common Beat」のミュージカルと比べるとどのナンバーよりも演舞時間が長いダンスであり、みんなで必死に練習したものですが、その成果をしっかりと披露することが出来たと思います。
と、ここまででお客さんにもボルテージをしっかりと上げてもらったと思いましたので、最後はその内に溜まったパワーを吐き出してもらおうと、「WakaWaka」という、かつてはワールドカップのテーマソングともなったナンバーに簡単な振りを付け、お客様を交えて行うことにしました。
それまでは何もない駐車場の一角ででも、明確に「ステージ」と「観客席」へと分かれていましたが、この曲が始まってしまっては、そんな境界線、一気に取っ払ってしまいましょう。
その一つの空間の中、それまでは「パフォーマー」だった私達と、それまでは「観客」であったお客さん、その境界線と壁を取っ払い、一様に混じってダンスを踊ります。
普段はあまりこういう機会はないのでしょう、最初は照れて萎縮していた子どもたちですが、最終的には額に汗を浮かべながら、輝く笑顔で踊ってくれていました。
かくして、今年も、楽農祭りは大成功に終わりました。
本来、音楽を聞くと体が踊り出すのも、おなかがすくと作物を作ってそれを食べるのも、どちらも「文化」という基盤の上に成り立つ、同じくらい自然なことのはずです。
奇しくも、その文化が発達して「文明」になるにつれ、逆に高度に洗練された社会性や生産流通システムの変化により、それらが自然なものでも、身近なものでもなくなってきてしまっています。
そんな現代人がつい忘れてしまいがちな人間の「自然」を、大阪府という大都会の片隅で、そっと感じることができる、楽農祭りは、そんなちょっと素敵なお祭りでした。