「より自由にそして大胆になった」中川 純里 | NPO法人コモンビート
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「より自由にそして大胆になった」中川 純里

「より自由にそして大胆になった」中川 純里

『中川さんが、一番自分の言葉で話していた』

「夜、この公園でコモンビートの居残りスタッフミーティングをしたり、あの高架下では、よくミュージカルのダンスの自主練をした」
名古屋市栄、思い出深い場所を巡りながら、中川純里さんは懐かしそうに話す。


彼女は4月より新社会人として総合商社に就職し、長野県佐久市にある関連会社に赴任となった。
彼女が配属されたのは太陽光発電システム部。
希望の部署であったという。
「わたしが就職した会社は、もともとガソリンや石油系が強いけど、東日本大震災の原発問題もあり、これからは絶対、太陽光発電が必要不可欠になると思った。
4月から2~3年間は、すべてのメーカーの太陽光発電システムを取り扱う別会社に出向という形になる。この期間でしっかり専門的な知識を身につけたい」
これからの抱負を彼女は意気揚々と語る。
この総合商社に就職を決めた理由は、どこにあったのだろうか。
「私は大学で建築を学んだ。なので建築関係で仕事を探してたけど、社会人として活躍しているコモンビートの仲間に相談して『商社もいいんじゃない?』とアドバイスをもらってからは、商社にも選択肢を広げて会社を探していた。
そして目に止まったのがこの会社。
でも実はこの時、就職活動がピークでちょっと疲れていたのもあって、面接をキャンセルしようと思っていた。それでも面接の前日にもう一度この会社のホームページをじっくりみたら、丁寧で分かりやすい説明に心を打たれて、面接を受けに行った。実際に行ってみたら、社内の雰囲気もとっても良くて『この会社に就職したい』と強く思った。それからはトントン拍子に進み、内定が決まった」
最終結果を電話で受けた時、人事部の方が採用理由をこう話したという。
『中川さんが一番自分の言葉で話していた』と。
面接攻略本のマニュアル通りではなく、彼女が自分の言葉で話し、相手の心を動かす事ができるのはなぜなのか。
「私の大学の在学期間は5年間。その5年間で色々な事を学んだ。大学での勉強もそうだけど、コモンビートの活動など大学以外で学んだ事もたくさんある。特に休学していた時期の経験が大きい」
「より自由にそして大胆になった」中川 純里

「失敗してもいいんだ」

彼女は休学していた時期、半年間は国際教育プログラムUp with People(以下UWP)に参加した。
2010年からコモンビートは、コモンビートスタッフを対象にし、一般財団法人OCAからの助成により、UWPへの参加支援をしている。
彼女はその第一回目の参加者である。
このプログラムは、世界各国の若者が集まり、各国を旅しながらパフォーマンスやボランティア活動を通して多文化や国際的リーダーシップを学んでいく。
もちろん共通言語は英語。彼女はこのプログラムに参加した当初、言葉の壁に苦しんだという。
「キャストには事前に交流会で会っていて初対面じゃなかったのに、プログラムが始まった時、1人に『Nice to meet you(はじめまして)』と挨拶してしまったら、ものすごく変な顔をしてその場を去ってしまった。頭ではこの挨拶は違うって思ってたんだけど、他の言葉が見つからなくて、ついつい口から出てしまった。
この出来事が、自分にとってものすごくショックだった。
大泣きして、ホストファミリーが慰めてくれたんだけど、それでもこのショックはなかなか消えなかった」
彼女にとって言葉の壁は想像以上に高かった。
その壁をどのように越えていったのだろうか。
「キャストの中で明らかに、私が一番英語をしゃべれなかった。分からない事を分からないと言うのも申し訳なくて、なかなか積極的になれなかった。でも、ダンスは得意だったのでダンスチームに選ばれて、言葉が話せなくてもダンスが踊れるって事が私の自信につながって、他のキャストとのコミュニケーションも少しずつ増えていった。
母が以前、『ずっとダンスを習わせたのは、いつかダンスが純里の自信につながると思ったから』って言ってくれたのを思い出して…親にも感謝の気持ちでいっぱいになった」
「今までの私は、そつなくなんでもこなすタイプ。
失敗しないように、まずは周りを観察してから行動に移していた。
でもこのプログラム中、失敗をして何度も大恥をかくうちに、失敗から学べる事ってとっても多いって事に気付いた。その時、失敗してもいいんだって思えた。失敗を恐れなくなった事で、自分の素を見せれるようになった。
私はUWPに参加して、より自由に、そして大胆になったと思う」
彼女が総合商社に就職を決めた事は、意外にもこの経験につながっているという。
「多分、UWPに行ってなかったらこの会社を選んでなかった。大学で建築を学んだんだから、建築会社に勤めなきゃって枠にとらわれていたと思う。UWPに参加して視野が広がった」
そして最後に彼女は、希望に満ちた眼差しでこう話す。
「社会に出れば、どんな壁があるんだろうって少しドキドキするけど…楽しみの方が大きい。私が社会で元気に働く事が、今まで私を支えてくれた家族や仲間達への恩返しだと思っている」
社会に出れば必ず、また壁にぶつかる事もあるだろう。
しかし失敗を自分のチカラに変える事ができる彼女なら、どんな高い壁も乗り越えていける。
彼女は、どこまでも自由にそして大胆にはばたいていく。

中川純里さん

中川 純里(なかがわ じゅり)

同じダンススクールの友人に誘われたのがきっかけで、『A COMMONBEAT』7期プログラムにキャストとして参加。11期、13期はキャスト兼スタッフ、17期は演出部スタッフを務めた。
2010年1月~6月まで国際教育プログラムUp with Peopleに参加。
2011年コモンビート理事就任。
名城大学理工学部建築学科卒、4月から総合商社に就職。
趣味はダンス、食べる事、フィギアスケート観戦。

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