ダイバーシティ&インクルージョンは、わたしとあなたのこと──。コモンビートは、「わたしとあなた」という一人ひとりを起点にして、個性を響き合わせ、多様な価値観を認め合うことを目指しています。主要な活動である100人100日ミュージカルプログラムの参加者が、具体的に何を経験し、学び、そして仕事や人生にどんな変化を起こしているか。「人生アンサンブル」では、参加者の生の声をもとに、コモンビート広報室がお届けしています。
次のステップ、次の生き方を模索する中で
今回ご紹介するのは、50代で退職し、「仕事よりも、自分の人生を楽しみながら、次のステップを探すこと」を選択した「先輩」こと菊山朋彦さん(以下、先輩)です。取材の冒頭に、「人生は、お金ではなく、思い出を貯めるもの」と思うようになったと伝えてくれました。彼は、総合電機メーカーでばりばりのエンジニアとして活躍していたキャリアを転換し、今はライフコーチをつとめながら、コモンビートのミュージカルにも参加しています。
大きな転換点において、彼はなぜコモンビートのミュージカルを選んだのでしょうか?選り取り見取りの選択肢の中で、コモンビートの何が彼の心を掴んだのか気になります。
「今までの人生で、甲子園球児のように一つのことに向かって、仲間と情熱を燃やし切ることが少なかったんだよね」と、先輩はぽつりと語ります。彼が、そのように燃える場を求めていたところ、信頼する友人から「コモンビートっていう、ミュージカルがあるよ」と教えられたそうです。それまで、「歌う、踊る、それだけは避けたい」と表現活動を敬遠してきた彼。「そういうことに手を挙げて参加する仲間と敢えて取り組むことで、自分が気づいていない可能性に気づけるかもしれない」と思い、コモンビートのミュージカルに参加を決めました。
生身の自分で勝負したら、人間らしくなった
自分の可能性が広がることによる喜びは、もちろんあります。一方で、「怒りなどのネガティブな感情が出ることで、より人間らしくなった」と先輩は語ります。どういうことでしょう?彼の今までの体験、これまでの学び、気持ちを覗いていきます。
先輩は「コモンビートでは、みんなにとって俺は全く知らないおじさんなんだ」と言い、コモンビートのミュージカルの場では、いわゆる「〜企業の、~という肩書があり、~をしています」というのは全く通じないことを教えてくれました。言葉、振る舞いなど、生身の自分を通して信頼されるしかない、という普段とは違う状況でのチャレンジを好意的にとらえていたそうです。周りとの年齢差がコミュニケーションの若干のハードルになるかもしれないと懸念していたそうですが、フラットに仲間と信頼関係を結べるようになったのは、自信にもなったといいます。
そんな先輩は、「参加して、めちゃくちゃ良かった」と目を輝かせていました。それは、決してきれいな経験だけではありません。たとえば、周りから「真剣にやって」「姿勢がよくない」と指摘され、「なんだよ、こっちだってやってるよ」と愚痴を言いたくなることもあったそうです。彼の言葉を借りると、そんな自分の「ぐしゃったとした感情」に触れたのは久しぶりとのこと。フラットな関係性の中での健全なぶつかり合いによって、自分のそんな人間らしさのようなものが引き出されたそうです。
ミュージカルだけじゃないから、1回では消化しきれない
今、舞台に上がるキャストとして参加している先輩。ここに書ききれない事も含めて、参加費以上の価値を感じています。同時に、「コモンビートは、1回の参加では消化しきれない」とも感じているそうです。そこのところを詳しく聞くと、「めちゃくちゃ面白いけど、1回では消化しきれない。それに20年も実績があるのに、まだ伸びしろがあると思う。」とどんどん熱く語り始めました。実は彼、キャストとして舞台で演じることに加えて、次回の59期東京プログラムのスタッフとして関わることを決めています。
先輩が驚いたのは、コモンビートが、ダンス、踊りの完成度に加えて、ダイバーシティ&インクルージョンや異文化理解のワークショップにとてつもないこだわりを持っているところです。「何を、どう演じるか」ではなく、コモンビートは「ミュージカルを通じて、舞台に立つキャストやそれを楽しむ観客などが、何を感じ、それがどう多様な価値観を認め合う社会につながるか」にこだわります。だから運営に加わることで、コモンビートが本領を発揮できるように、彼は貢献したいということでした。
本人だけでなく周囲も変えるミュージカル
まもなく舞台を迎える先輩に今の心境を聞きながら、コモンビートに関わる人、これから関わる人、舞台を観る人に向けて、メッセージを教えてもらいました。
「ここまで走り切ってきたことを、全力で出していくよ。だって、コモンビートで出会った仲間と過ごせる期間は限られているしね。彼女、彼との時間を丁寧に過ごしていきたい。もちろん、信頼関係は続くけど、観客に魅せる準備、そして本番はこの一回しかないからね」
「これからコモンビートに関わろうとする人には、『あらゆる人に、いい影響を与える。やった人自身が、周囲の人にいい影響を及ぼす』と伝えたいです。自分自身がそれに納得して、今度は運営側として待っています。まずは、本番公演に、そして、ミュージカルの体験会にも気軽に来て欲しいです」
8月の東京公演で、先輩をはじめ、キャストのメッセージを舞台で受け取りにきてください!
■ミュージカル「A COMMON BEAT」第57期東京公演
日程:2023年8月19日(土)・20日(日)
会場:北とぴあ さくらホール
詳細:https://musical-acb.com/
観劇サポート(音声ガイド・字幕)あり