ダイバーシティ&インクルージョンは、わたしとあなたのこと──。コモンビートは、「わたしとあなた」という一人ひとりを起点にして、個性を響き合わせ、多様な価値観を認め合うことを目指しています。主要な活動である100人100日ミュージカルプログラムの参加者が、具体的に何を経験し、学び、そして仕事や人生にどんな変化を起こしているか。「人生アンサンブル」では、参加者の生の声をもとに、コモンビート広報室がお届けしています。
大学を飛び出してチャレンジ
今回ご紹介するのは、群馬在住の大学4年生の安島美晴さん「みはるん」(以下、みはるん)です。「興味を持ったことには挑戦」をモットーにする彼女は、週末は群馬から東京に通ってミュージカルを練習しています。大学1年生までは、大学での勉強とアルバイトで変わり映えのない毎日を過ごし、本人曰く消極的だったそうです。
そんな彼女は、従姉妹が海外留学で成長した様子に触れ、自身も留学しました。現地で様々な人とコミュニケーションを取り、様々なことに挑戦し、「なら日本でもできるはず」と思い、少しずつ変わっていきました。そんな中で、中学校の時の部活のように「皆でひとつの物を作り上げる」ような活動がしたい、そういう環境に身を置きたい、と探している中で出会ったのがコモンビートでした。参加しているのはプロではなく、一般市民。歌もダンスも未経験だけど、ここならみんなと一緒に輝けるかもしれない、と魅力を感じました。
この人たちなら大丈夫だ
さて、みはるんは、意気揚々と練習に望み、ソロで歌う役にもなりましたが…。実は、声が枯れ、ダンスに自信が持てず、ソロで音を外すことに落ち込んでと、順風満帆ではありませんでした。
彼女は、「最初は、猫を被ってたんですよね(笑)」と正直に言いました。約80名の参加者は、もともと互いを知らないし、頻繁に会う訳でもない。でも、練習を重ねる中で、「ここは、素をさらけ出せる」と感じられるようになったと言います。そんな中で、うまくいかない不安を打ち明けた時、仲間はしっかり話を聞いて、励まし続けてくれました。それは、運営スタッフも同じです。いつしか、みはるんは「この人たちとなら大丈夫だ」と思うようになります。今でも「踊れない、どうしよう」「うまく歌えるかな」との不安が完全になくなったわけではありませんが、それよりも「練習に行きたい」という気持ちが強く、毎週みんなに会うのが楽しみで仕方ないようです。
一見すると、明るく元気で、行動力のある若者。でも、常に明るい人はいません。いつも元気な人もいません。行動力があっても、どうにもならないこともあります。誰でも落ち込むし、方向性を見失うこともあります。けれど、そこに「この人たちなら大丈夫」と思える場、関係性があれば、それが困難を越えて行くチカラになるのだと思いました。
「市民ミュージカル」を味わう
みはるんは、「踊る、歌うといった舞台での練習の他に、思ったよりも、キャスト同士で話したりコミュニケーションを取る時間が多い」のが意外だったと言いました。
100人でつくるミュージカル「A COMMON BEAT」のテーマは異文化理解や共生ですが、その作品をつくりあげる100日間自体が「ダイバーシティ&インクルージョン」を体感する過程でもあります。年齢も職業も価値観もバラバラなキャストが集まり、自分という人間を知ること、相手を知ること、そして、それぞれの違いはそのままに、一つの舞台を作り上げること‥。そんな道のりを辿るからこそ、「作品が表そうとすることが理解しやすい」と言われて、嬉しくなりました。
また、学生のみはるんからすると、周りのキャストは年上の人が多いことになります。でも、この場では、年齢や経験による上下関係などはありません。自分は初めて参加するキャストだけど、ただ教えられるだけでなく、自分が得意なことを教えることもある。キャストだけど、演出について提案や疑問を投げかけることもできる。それは、一人一人が対等な立場で一緒に価値を生んでいく、「市民ミュージカル」ならではの醍醐味かもしれません。
その一瞬に全てをこめて
あと少しで本番を迎えるみはるんに今の気持ちを聞くと、予想外の答えが返ってきました。本番が終わった後に、今までのように仲間に会えなくなる事実を思うと、今から虚しい」と寂しそうに話していました。
先日そんな思いを他のキャストに話したところ、「この場は、あくまで始まりにすぎない。プログラムが終わっても関係性は紡げる」という言葉を、誰かがぽんと言いました。この言葉に彼女は救われ、だからこそ一瞬しかない本番に、大きな輝きを放とうと思いを強めています。
大人がミュージカルに挑戦している姿を見る、そして、それは特別な人たちだけのことではなくて、あなたもできる。そんなエネルギーを体感してほしい──。みはるんは、観客かつ将来の参加者にメッセージをくれました。そして自分を観に来る人には、「わたし変わったよ」と自信をもって言えるそうです。ボランティアやミュージカルと経験が増えたことで、「新しいことに挑戦するのかっこいい、私も頑張る」と、友人から嬉しい言葉をもらったこともあるそうです。
これまで人から刺激を受けることが多かったけど、知らないうちに自分も誰かの刺激になってるんだ、これもその一つになったら嬉しいと語ってくれました。
8月の東京公演で、みはるんをはじめ、キャストのメッセージを舞台で受け取りにきてください!
■ミュージカル「A COMMON BEAT」第57期東京公演
日程:2023年8月19日(土)・20日(日)
会場:北とぴあ さくらホール
詳細:https://musical-acb.com/
観劇サポート(音声ガイド・字幕)あり