“人それぞれ”は、結論ではなく起点である「See the difference〜「違う」で終わらせないコミュニケーション〜」開催レポート | NPO法人コモンビート
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“人それぞれ”は、結論ではなく起点である「See the difference〜「違う」で終わらせないコミュニケーション〜」開催レポート

3月9日(水)、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)をテーマに、違いを知り、違いと出会い、違いとつながっていくための「See the difference」の第10回が開催されました!

今回のゲストは、日本青年国際交流機構(IYEO) 事務局次長の工藤さん。世界青年の船のプログラムやIYEOの活動のご紹介、そして、そんな今のお仕事とは裏腹に昔は海外が怖かったという意外な自己紹介まで、冒頭から参加者は一気にひきこまれていきました。

冒頭から笑顔の絶えないやわらかい雰囲気で会は進行!

違う、で終わらせないコミュニケーションって?

続いて、モデレーターも含めてトークを交わしながら、イベントタイトルにあるこの問いの背景について共有していただきました。

「私、小さい頃からお米が苦手だったんです。でも、変な子って思われたり、いちいち「なぜ?」って聞かれたりするのが、めんどくさかったり怖かったりして、家族にすらずっと隠し続けてきたんです。」そんな工藤さんが変わった一つのきっかけが、世界青年の船だったそう。世界中から集まった人たちと船旅を通じて交流したり共同生活をするこのプログラムには、「全員が共通して持っている常識」や「当たり前」というものが存在せず、それはこれまで体験したことのないカオスな空間。そこで工藤さんは、人と「違う」のは本来当たり前であり、人と「違う」ということで勝手に殻にこもってしまっていたのは自分だった、と気づいたといいます。

そんな、ある意味「自分に対してのメッセージでもある」というこのイベントタイトルに引っ掛けて、工藤さんがこれまで違いに直面した3つのケースを持ってきてくださいました。ここから参加者同士のトークタイムです!

ケースその1 :留学先のルームメイトが自分の歯ブラシを使っていた

画面に表示された瞬間に、参加者の表情や反応が大きく分かれました

もしみなさんだったらどう反応しますか?生理的に受け付けられない、今後は使われないように隠す…など、参加者同士のトークでも様々な声があがりました。

工藤さんに当時のことをお聞きしました。なぜ使ったのか工藤さんがルームメイトに尋ねると、「じゃあ私のストッキング使っていいよ!」と返され、さらに戸惑ったそう。ただ、そこでさらに踏み込んで聞いてみることで、そのルームメイトの出身地域にある「ケレケレ文化」では、そのように物を他人と共有したり貸し借りすることが普通であることを知ったそうです。相手の行動の背景を知ったこと、そして、その上で自分はそのような習慣がないから今後はやめてほしいことを伝えたことで、疑念や不満や怒りのような感情はスッとおさまったといいます。「諦めないで聞いてよかった…。」最後にはそうつぶやかれました。

ケースその2:握手をしようとしたら手を振り払われた

ちょっと傷ついてしまうかも?

こちらも参加者同士で話をし、「自分がなにか悪いことをしたのかな?」「今後他の人にも握手を求めることが怖くなってしまうかも」そんな声も聞かれました。

工藤さんにお聞きすると、この留学生はムスリム(イスラム教徒)で、結婚前に異性と体が触れることはNGだったそう。工藤さんに嫌悪を抱いたりしたわけではなくて、単純にびっくりしてしまっての反応だったそうです。

ケースその3:日本のシェアハウスで自分のシャンプーが人に使われていた

今までとは違い、最後は日本人同士のケース!

「日本人同士だから、海外のように変なことは起こらない」と思っていたという工藤さん。しかし、日本でのシェアハウスでの生活でも、他人の行動やふるまいに、「あれ?」「なんで?」と感じることがなくなることはありませんでした。

それらの経験を通じて気づいたのは、「違い」というのは、国や文化や宗教という大きな枠組みの間だけで起こることではないということ。長年一緒に暮らしてきた家族の間でさえ、「違い」は確かに存在しています。「家族なのになんでわかってくれないの?」「察してほしい」という思いから解放されることで、家族関係がよくなったり、他人の言動に振り回されずに済むようになったと言います。

違いはあっていいし、当たり前にあるもの

そのような様々なお話を経て、参加者からも、「違いに引かない」「ちゃんと説明する」「どちらかだけではなく両者が歩み寄ろうとすることを大事にしたい」など、様々な意見が交わされました。

イベント最後は、それぞれが踏み出すアクション宣言!

違いを目の当たりにした時、意見がぶつかった時…、「私とあなたは違うよね」「人それぞれだからしょうがないよね」と、それ以上のコミュニケーションを放棄したり、わかりあおうとすることを諦めたくなることもあります。でも、違いは、関係性や対話の結論ではなく、あくまで、起点に過ぎません。無理やり同じに揃えようとするのではなく、「違うままでも、共に在れるようにする」そのための方法を模索する姿勢を持ち続けたいと思います。

ゲストの工藤さん、参加者のみなさん、そのヒントとなる時間をありがとうございました!

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次回の3/23(水)開催のsee the difference のテーマは、「普通の人ってどんな人?」です。ぜひお楽しみに!

運営スタッフ 花宮香織(はな)