私の書道の先生の大先生でいらっしゃる、故・中島司有先生が残した文の抜粋を紹介します。
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「注意力・持続力のすすめ」
中島司有先生
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日本人は流動するものが好きである。あっさりと軽妙なものが好きである。何につけても速度を好む。その反対のもの、たとえば遅く鈍く重いものは好みではない。
その日本人に向って、遅く鈍く重くあれと主張したら、嫌われることは明らかである。
けれども、今、日本人は、もう一度、こつこつと荒地をきりひらき、洪水と闘い、何度も何度も天神地祈に拝礼をささげ、一粒の五穀もおしいただき、一字一字見馴れぬ外来の文字をよみ習った遠い先祖の心にかえらなければならないと思う。
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今の子どもは質が低下したというが、実は子どもは大人の縮図なのだ。基礎づくりを省いて子どもを高度成長をさせようとした親や教師が子どもの質を低下させている元兇なのだ。
大人も子どもも、この辺で物学びの原点に帰ろう。注意力と持続力をきたえて一歩一歩つみあげてゆこう。学問や教育には高度成長も早わかりもないのである。
そしてやりぬいた人ならわかると思うが、注意力や持続力をきたえることこそ、最も早く高度成長をなしとげる近道なのだ。