「人が、元気で明るい人の所に集まってくるのは万国共通」
「この公園は、私が大好きな場所。旅立つ前に一度来たかった！
雨の後の新緑って、水分をたっぷり吸い込んでますます元気で生き生きと見える」
新緑が輝く5月、雨混じりの代々木公園で村岡真梨さんは実に明るく楽しそうに話す。
彼女は間もなく洋上ミュージカル担当スタッフとして、NGOピースボートが企画する地球一周の船旅の第76回クルーズに乗り、3ヶ月かけて世界各国を巡る旅に出る。
今の彼女は明るさと自信に満ちあふれ、周囲の人さえも幸せな気分にしてしまうパワーを持っているが、一年前の彼女は自分に自信がなく悩んでいたという。
何が彼女を変えたのか…。
彼女は2011年7月から半年間、国際教育プログラムUp with People（以下UWP）に参加した。
コモンビートは一般財団法人OCAからの助成により、2010年からコモンビートスタッフを対象に、UWP参加への金銭支援を行っている。もともとこのプログラムに興味があった彼女だが、当時は自分の長所をうまくアピールする事ができず、支援対象者の選考からは惜しくも外れていた。
それでも全額自分で参加費を払い、それまで勤めていた銀行を退職して参加する事を決意した。
「コモンビートの支援が受けれないって決まった時、すごくショックだった。
でも、今思えば…支援が受けられなくて良かった。
もしあの時の私が、コモンビートの支援でUWPに行ってたらコモンビートの代表だから、頑張らなきゃってプレッシャーに押しつぶされていたと思う。
自分のためだけにUWPに行けたのはすごく良かったし、必要な事だった」
彼女は「UWPでの事をじっくり話すのは初めてかも」と少し照れながらも生き生きとした表情で話し続ける。
「それまでの私は、自分に自信がなくって『どうせ私なんか…』って思ってた。何かやりたい事があっても、自信がないから人に譲ってばかりいた。自分の上に、重い蓋がのっている感じ。
UWPに行っても、最初は言葉が通じなくて、ずっと泣いてばかりいた。
でもここは外国。英語を話せないと発信する手段が少ない。チャンスが少しでも巡ってきたら、考えてないで泣いてないでいかなきゃ！って思った。
最初、『まり大丈夫？理解できた？』って私に声をかけてくれる仲間は、いつも心配そうな顔で笑顔がなかった。でもある時、『全然分からない！あはははー！』って思い切って笑ってみたら、相手も笑ってくれた。それからは、少しずつ皆とのコミュニケーションが増えていった。
自分の弱点さえもネタにして、笑い飛ばすすべを学んだ。
たとえ言葉が通じなくても、人は元気で明るい人の所に集まってくるのは万国共通なんだなぁと改めて実感できた。
私はUWPに参加して、すごく度胸がついたと思う！」
「100パーセント自分を出し切りたい」
UWPでの経験で大きく成長した彼女は、『洋上ミュージカル担当スタッフ』という新たな挑戦をする。今回は正真正銘、コモンビートの代表として。
「去年UWPに行く前に、第74回クルーズにコモンビートから洋上ミュージカル担当スタッフが乗船すると決まった時から、次は自分がやりたいって思ってた。その時の私は自信がなかったから、もちろんそれは言えないままだったんだけど…UWPで少しずつ自分に自信がついてきて、その気持ちが強くなり、UWPに参加している途中から、『洋上ミュージカル、次は私がやりたい！』っていう意思をコモンビートの理事に伝えた」
帰国後、改めて『洋上ミュージカル担当スタッフ』を自分にやらせてほしいという想いを伝えた結果、彼女の熱意が周囲を動かし、第76回クルーズにスタッフとして乗船が決まった。
洋上ミュージカル担当とは3ヶ月の地球一周の船旅の間で、乗船客の中からキャストを集め、『A COMMON BEAT』を船の上で上演する役割を担う。
キャスト集めからミュージカルの演出まで、その一切すべてが彼女に任されている。
「船で実際、ミュージカルを創るのは最後の1ヶ月間。最初はカルチャースクールの立ち上げをサポートしたり、寄港地ではツアーリーダーを務めたりする予定。これからずっと続けたいと思っているダンスや英語を生かせるし、船では色々挑戦したい！
でも、分からない事や戸惑う事もきっと出てくると思う。学ぶ姿勢も大事にしたい。100パーセント自分を出し切りたい」
船での意気込みを力強く語る彼女に以前、自分の上にのっていた重い蓋の行方を聞いてみる。
「自分の上にのっていた重い蓋はいつの間にか、取れてた！自分の中に渦巻いていたマイナスの感情が、全部プラスのエネルギーに変わった感じ。今の私は、エナジーにあふれてる」
5月8日、彼女を乗せた船が出航した。少し緊張しながらも期待と喜びに満ちた表情で。
彼女の新たな旅は今、始まったばかりだ。
村岡 真梨（むらおか まり）
大学から始めたよさこいを通じて知り合った仲間に誘われ、ミュージカル『A COMMON BEAT』6期公演を観たのがきっかけで、10期プログラムにキャストとして参加する。
その後も12期キャスト兼スタッフ、15期はスタッフとして参加。
現在は、コモンビート東京地域スタッフとして活躍中。
2011年7月より半年間、国際教育プログラムUp With Peopleに参加した。
2012年5月8日より、NGOピースボートが企画する地球一周の船旅の第76回クルーズに洋上ミュージカル担当スタッフとして乗船中。
