私たちは皆、グラデーションの中に See the difference〜こころの病はグラデーション〜 開催レポート | NPO法人コモンビート
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私たちは皆、グラデーションの中に See the difference〜こころの病はグラデーション〜 開催レポート

8/24(水)、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)をテーマに、違いを知り、違いと出会い、違いとつながっていくための「See the difference」の第19回が開催されました!今回のゲストは、臨床心理士の佐々木浩介(ささみん)さんです。

ゲストのささみん(下)です

佐々木さんは、病院や学校でカウンセラーをしています。予備校では、大学進学を目指す子たちが思い描く未来のために、彼らの心のサポートをしているそうです。DV加害者を対象にカウンセリングもされています。元々は被害者のサポートをしていましたが、加害者へのアプローチがないがしろにされていると感じたことがきっかけだったそうです。最近はYouTubeでささみんちゃんねるの配信もしています。

精神疾患は、私には関係の無い話?

精神疾患を持つ人に対して、自分とは関係がない別世界にいるようなイメージがあるかもしれません。佐々木さんは、「普段から精神疾患を抱える方と接する機会がないと、彼らを特別な存在に思ってしまう。そしてそんな世の中は悲しい。」と言っていました。精神疾患は誰にでもなる可能性があるものであり、佐々木さんは実際にカウンセリングをする中で、「自分がなるはずじゃなかった」という声を何度も聞いたそうです。

グラデーションってどういうこと?

イベントタイトルにもあるように、精神疾患はグラデーションであり、いくつもの部屋を行き来するイメージだと言っていました。健康な部屋、少し不調気味な部屋、危なくなってきた部屋、仕事や学校を休まなきゃいけない部屋など、心の状態を表した部屋がたくさんあり、自分の状態に合っている部屋をトントンとノックして、ビャーと入っていく感覚だそうです。誰しもどこかの部屋に所属しているので、「精神疾患」という名前を付けられた人だけが遠い世界にいるのではなく、皆それぞれの違うこころの状態を持っているということに気づきました。そして佐々木さんは、1つの部屋に留まり続けるのではなく、行ったり来たりするようなイメージだと教えてくれました。

しかし、もし自分が健康じゃない部屋に行くことになった時、上手に部屋を移動するのは難しく感じます。佐々木さんは、元気になる5つの方法を使うと、上手に部屋の行き来を自分でコントロールできるようになると教えてくれました。5つの方法は佐々木さんのYouTubeチャンネルで紹介されています。

距離感もグラデーション

もし身近な人がこころの病を持っていた時、どう接したら良いのでしょうか。佐々木さんは、友達として一緒に悩むこと、一緒に苦しむことは素晴らしいことだと思うが、自分も死にたくなったり、リストカットをするようになってはいけないと教えてくれました。そのためには、この話は自分の話では無く、相手の話であると客観的に考え、一歩線を引いたり、相手との間にある幕を薄くしたり、濃くしたりすることも大事だと教えてくれました。これは自分を守るためです。心の状態だけがグラデーションになっているのではなく、相手との距離感もグラデーションになっているということが印象的でした。

一度踏み込んでみよう

しかし、自分と違う考えやメンタリティを持っている人に対しての距離感のグラデーションのコントロール方法は難しいように感じます。どうしたら身につくのでしょうか。これは、佐々木さんが16年間臨床心理士をしていても難しいと感じることだそうです。それでも、距離感のコントロールは一度踏み込んで試してみることが大事だそうです。その後、相手との間にある幕を濃くしたり薄くしたりしてみて、相手の反応を見ながら、調整していくと良いと教えてくれました。しかし相手の状態は一定ではなく、時間によってもグラデーションを行ったり来たりします。1分後にはきつくなったり、1分後にはすごく元気になったりします。相手の話を真剣に聞きながら調整していくことは、20年30年経っても続けていくんだろうなと思っているという佐々木さんの言葉がとても心に残りました。

若者の死因の1位は自殺

日本の若者の死因の1位は自殺です(※)。これは、皆それぞれの違うこころの状態を持っているということに気づけず、「精神疾患」の人だけが遠い世界にいるように感じ、腫れ物に触るように「そっとしておこう」と思って対応してしまうからだと思いました。しかし佐々木さんは、しつこいと思われたとしても、挨拶や声かけをして相手の様子を探ってみることが大事だと教えてくれました。相手の状態も、距離感の幕の厚さもわからないままにせず、相手との間にある線はグラデーションだと認識し、勇気を持って踏み込んでみようと思いました。

※厚生労働省. ”令和元年(2019) 人口動態統計月報年計(概数)の概況”. 38ページ

誰でも精神疾患になる

幸せホルモンと呼ばれるセロトニンやノルアドレナリンが満タンである状態が健康だそうです。しかし、ショッキングなことがあったり、目を使いすぎたりすると幸せホルモンがなくなっていきます。そして、枯渇すると誰でもうつ病やこころの病になるし、誰でも「死にたい」と思うようになる。ここに参加している皆さんも全員うつ病になる可能性があるという言葉が印象的でした。私たちは皆グラデーションの中にいて、それぞれ違うこころの状態を持っていますが、それと同時に、誰もがいつでも当事者になる可能性があるということです。

「違い」との向き合い方

佐々木さんや参加者のみなさんと対話をする中で、こころの状態はグラデーションであること、誰でもこころの病の当事者になり得ること、そして相手との距離感はグラデーションであると意識し、踏み込む勇気が必要だと言うことを学びました。そしてこのことは、「こころ」や「精神疾患」以外の枠組みでも同じだと気づきました。例えば障害は、障がい者とそうでない人の二分ではないですし、国籍も、外国人とそうでない人の二分ではありません。性自認や性的指向も二分ではなく多様です。そして、全てにおいて誰もが当事者になる可能性があります。そして、これらの当事者の方と出会った時にも、異質な存在だと距離をおくのではなく、少し踏み込んで知ろうとする勇気を持とうと思いました。

イベントの最後は、明日から実践したい小さな一歩をシェアする
「アクション宣言」!
学んだことを自分の生活にどう活かすか?を
考えるのもこのイベントの魅力です。

 

ゲストの佐々木浩介さん、参加者のみなさん、学びある時間をありがとうございました!

次回の9/21(水)開催のSee the Differenceのテーマは、「平和の花を咲かせたい!マレーシアで学んだ多文化共生のヒント」です。ぜひお楽しみに!

インクルージョンチーム 学生インターン
橋本佳恋(かっきー)