考えるより動くが先、誰よりも自分が楽しむ
2012年の初夏。
10周年という区切りの年を迎えるにあたり、そしてこれからの10年後に向けて、僕らのビジョンミッションの整理と見直しをしたいと考え始めました。
団体を設立した頃の状況、社会環境、想い、仲間たちの顔…
これまでの活動を振り返る中でも、特に設立当時の様子を思い巡らせながら、出来事の1つ1つを紐解いていました。
振り返れば奇跡のような日々
どうして団体は10年続いたのか
何を大切にしてきたのか
何が僕らの独自性なのか
そして、これまでの時間を創ってきたみんなと、いろいろな角度から話をし意見をもらいました。
皆から出てくる言葉には共通して、「多様な人材が集まる」「芸術表現(ミュージカル)をする」という点がありました。これが「活動をする/支える楽しさである」ということに繋がっていたという話もありました。
そして、すべては何か決めてから始めたわけではなく、「すべては偶然にもそこにあり、それを1つ1つ進めているうちに何かが生み出された。」というのが特徴・・・なのかもしれません。
いつも「考えるより動くが先」で「誰よりも自分が楽しむ」ということが常にあったように思います。
参加条件は地球一周、そしてA COMMON BEATという作品
そもそも、第1期を始めたときは「地球一周を経験したことが参加条件」であり、そんな100人が集まって活動を始められたということは、今となっては不思議なことです。
それぞれが、自分で地球一周のチャレンジを決めた意志
ほとんどの人が一人で飛び乗ってから始まった、多くの仲間との絆
世界のいろいろな国を見て感じた体験
集まった100人の一人一人は、とても個性的でした。
どんな環境でも柔軟に対応し生きぬいていくような、言ってみれば生命力の高さのようなものを感じました。
勢いや若さとはいえ、こんなチャレンジャーな仲間が集まって始められたことは、何よりも大きなことだったように思います。
そして集まった仲間が演じるのは「A COMMON BEAT」という作品。
人種や文化の価値観を越えて1つの鼓動を感じる・・・そんなテーマの作品を創り上げる過程で、僕ら自身がその大切さに気づいていくことができました。
だから、徹底的に話をして解決をしていったり、気持ちに折り合いをつけていくことや仲間と乗り越えていくことができるのでしょう。
私たちの活動は、人が人を育み、作品が我々を育んできたといっても過言でありません。
コモンビートはこうして、「人が集まってから、それを団体とした。そして作品を団体名とした。」という、状態を定義したことで、団体が誕生しました。
多様な価値観を持った人がぶつかり合いながら必要な組織を形成していった、という一種の生命体のような成り立ちであるともいえるので、組織は常にアメーバのように変わり、誰もが主役で裏方のような動きができるのです。
Harmony of Uniqueness
コモンビートを創設した頃にも、団体のビジョンやスローガンを考えていた頃がありました。
しかし、いろいろ考えた末に、言葉にしてしまうと言葉遊びになってしまうということになり、スローガンを作ることは頓挫しました。
「何かを言葉で定義すると、その言葉で思考が停止してしまう」
活動を始めて間もない時期であり、NPOがまだ社会的認知をされていない時代でした。
また、私たちがこの活動で一体どんな風に社会に貢献できるのか?ということが固まっていなかったようにも思います。
そんなスローガンを考える過程の中で、いくつかの表現が生まれました。
ひとりひとり 違うからこそ美しい
Harmony of Uniqueness
A COMMON BEATの作品では、Symphony of Human Cultureという言葉があります。
コモンビートでは作品よりも活動にフォーカスをしていたので、その活動から生まれる価値がどんな表現であるのかということを考えていました。
それぞれが地球一周をした個性豊かなメンバーばかりでしたので、「皆が同じ生き方をしなくてもいい!個性は皆違うからいいんだ!」ということを強く主張していたように思います。
そんな中で生まれたこれらの言葉も、団体を表す言葉としてはあまり使われることもなく眠っていました。
熱い気持ちが未来をつくる 感じるチカラが日本を育てる
2007年。
活動全体を「共に育む=共育」と名付け、団体の活動をわかりやすく伝える必要がでてきたためスローガンを作ることになりました。
そして皆で考え出てきた言葉が、「熱い気持ちが未来をつくる 感じるチカラが日本を育てる」です。
私たちの活動を表現すると、情熱(チャレンジ)と感受性で表すのが相応しいのではないかということから、この2つの言葉を用いてスローガンを作りました。
その後、ミュージカル公演のオープニングで映像を流していた頃には、大人が変われば 子どもも社会も未来も変わるというスローガンが登場しました。
それぞれ、100人の大人が100人で創り上げるミュージカルをそのまま言い換えたようなスローガンです。
その後、この2つの言葉が団体のビジョンとミッションとなりました。
多様性の再認識、そしてビジョンの再定義
日本社会がグローバル視点を意識し始めたころ、ちょうどコモンビートも海外との活動を進めるタイミングとなりました。
そして、コモンビートが持つ活動の特徴や活動理念をディスカッションしていく中で、多様性という言葉や考え方が私たちを表すのにふさわしいのではないかと考えるようになりました。
これまでの活動を振り返っても、とても個性的な人が多く集まっていますし、
価値観の違う人が切磋琢磨し1つの目標に向かって協力しあう活動ができています。
そして活動のメインとなるミュージカルでは、異文化理解をテーマにしたA COMMON BEATという作品です。
僕らの活動そのものが多様さに満ちあふれている・・・そんな時、Harmony of Uniquenessという創設当時に作った言葉が舞い戻ってきました。
個性や価値観の大切さ、そういった人が集まったことによる多様性のある社会の必要性、その上でミュージカルなどの芸術的な表現のエッセンスを加える・・・ということをすべて合わせた上でビジョン(スローガン)が生まれました。
個性が響き合う社会へ 〜Harmony of Uniqueness〜
個人と社会の多様性を高める、そして10年後
このスローガンも、状態を定義にしただけのものなので、特にこれまでと活動が変わるものではありません。
しかし、個人と社会の多様性が高めることで、社会は良くなるんだ、ということを、意識しながら活動するのとしないのでは、全く結果が違います。
すでにミュージカルプログラムでは、外国人参加者が増え始め、海外プログラムへの興味関心のある人もどんどん集まってきています。
10年先の未来にどんな活動をしているのか楽しみです。
その時もきっと、状態を定義することになるのでしょう。
コモンビート代表 中島康滋