次は世界へ!?『期待にこたえる』から、『ゼロから生み出す』自分に。コモンビート事務局 ミュージカルプロダクション 演出ディレクター 小林春菜【パンゲア図鑑 Vol.4】 | NPO法人コモンビート

次は世界へ!?『期待にこたえる』から、『ゼロから生み出す』自分に。コモンビート事務局 ミュージカルプロダクション 演出ディレクター 小林春菜【パンゲア図鑑 Vol.4】

こんにちは!NPO法人コモンビート職員1年目、村山菜々子(なな)です。

この「パンゲア図鑑」は、私(なな)が、一緒に働く仲間たち(=パンゲアメンバー)に、「コモンビートの裏側」や「NPOで働くリアル」、そして「その人らしさ」に迫るシリーズ。

今回は、ミュージカルプロダクションで演出ディレクターを務める小林春菜(haruna)にお話を聞きました!harunaは、コモンビート歴およそ12年。演出として全国の舞台に関わりながら、アメリカでの駐在経験、そして離島専門の引越し屋や国際交流事業にも関わるという、まさに“多拠点・多軸”な人生を歩んでいます。そんなharunaに、活動や想いをたっぷり聞いてみました。ぜひ最後までお読みください!

“期待されたら応えたい、超えたい” で駆け抜けた初期

なな:コモンビートとの出会いを教えてください!

haruna:社会人1年目で「なにか習い事をしたい!」と思っていたタイミングで出会ったのがコモンビートの「100人100日ミュージカル®︎プログラム」。歌もダンスも好きだったし、「100日で完結する」っていう期間限定感に惹かれて、名古屋プログラムに参加したのがはじまり(2012年)。その後は、歌とダンスで国際交流を行う「アジアンビート」やよさこい企画にも参加したよ。

アジアンビートって…?
A COMMON BEATの作品の中に、「言葉をこえて」というナンバーがありますが、
本当に “言葉をこえてお互いのことを理解し合う経験” や、
“歌やダンスの力で言葉を超える経験” ってなかなかしたことないのでは?
という声から立ち上がった、「歌とダンスを通じての国際交流活動」を行うプロジェクト。2013年に始まりコロナ禍を乗り越え、”多様なコミュニケーションで一生の友だちを”、をテーマに、何かを一緒に取り組むことで、言葉を越えた心の交流を生み出しています。
これまでに、タイ、台湾、フィリピン、韓国、インドネシアに訪れ、
ツアー回数は9回、オンラインプログラムも6回実施しました。

よさこいの本番後に、「次一緒に演出やらない?」と声をかけてもらったことがきっかけで2013年のミュージカルプログラムでは演出チームのスタッフをすることに。「期待されている。だったら応えたい。挑戦したい!」と思ったのを今でも覚えています。翌年にはプログラムを引っ張るコアスタッフとして初めて「演出」に挑戦しました。

なな:すごい!最初は100日という限定感に惹かれていたのに、「コモンビートを続けたい」と思ったきっかけは?

haruna:九州で行われた公演にウェルカムキャストとして参加したことがきっかけ。めっちゃ楽しくてやりがいがあったんだよね。

ウェルカムキャストとは…?
公演で、会場運営を担当するスタッフ。過去に舞台に立ったキャストが次の公演を支えています。

なな:ウェルカムキャストでどんなやりがいや楽しさがあったの?

haruna:自分で考えて動いて、とにかく笑顔でお客さんに挨拶していたらとっても喜んでくれて。その時は夢中で誘導していたけど、あとから思い出したときに「うわあ、これめっちゃ楽しい…!」って思ったんだよね!あと、すごいなぁ、かっこいいなぁって思うウェルカムキャストの人たちにもいっぱい出会った。それに、その土地ならではのごはんや文化、雰囲気に触れられたのも、純粋に楽しかった!

100日間のその先にも楽しみややりがいがたくさんあって、「コモンビートにもっと関わっていきたい!」って自然に思うようになっていったんだよね。そこから、3年間でスタッフや演出にも挑戦して、理事にもなった。関わり方だけ見ると、順調に駆け上がったようにも見えるけど、実際にはまだまだ視野の狭さや一方的なコミュニケーションが課題だと感じることも多くて、「だれかと一緒に創る」とか「相手の気持ちを想像する」力は全然足りなかった。自分の未熟さを痛感する3年間でもあったなあ。ここまでが私の「コモンビート第一フェーズ」って感じ!

なな:第一フェーズが既に濃いね!!

夢を叶えたアメリカ駐在、そして原点回帰

なな:そこからアメリカにも行ってたんだよね?

haruna:物流会社で働いていて、2014年から2年弱、アメリカ駐在をしてました。大学で外国語を勉強していたから、海外駐在は一つの大きな夢だったんだ。

なな:仕事での夢も叶えてるのすごいね!どんな2年間だった?

haruna:営業から通訳までいろんな業務をしながら、ロサンゼルスを拠点に全米を飛び回る生活だったよ。サンノゼ、サンフランシスコ、北カリフォルニア、ニューヨーク、シカゴ、ダラス、ケンタッキー、インディアナ。カナダのトロントやバンクーバー!日本で新幹線に乗るノリで飛行機に乗ってた!
ロサンゼルスでZumbaと出会って、インストラクターの資格もとったり、休日にはアメリカの国立公園めぐりや、みんなでパーティー開いたり、スポーツ観戦、サーフィンやゴルフ…本当に楽しかったなあ。

なな:仕事での夢のためにコモンビートを離れて、いろんな経験してたんだね!すごすぎる!!
帰国してから、コモンビートに戻ってくるきっかけはあったの?

haruna:当時、「コモンビートの演出をリニューアルする」という大きなプロジェクトが動いていて、「A COMMON BEAT」の原作(英語台本)を読み直し、日本語版台本の書き起こしに関わったんだ。改めて原作を読み返し、 原作の意味や想いにぴったりなセリフや演出を見つけて、今の形を作り上げました。その後、コモンビート15周年での東京・台湾公演に向けて、英語台本作りでは、日本語版しかないRebirthの英訳など、今のコモンビートにあわせた英語台本は私たちが書き起こしたんだよ~!
アメリカでの経験を日本に戻ってきてから活かすことができて良かったなって思う!

「大人の目の色がかわる瞬間」をつくるのが好き

なな:harunaの経験がめちゃくちゃ活かされてる!その後のコモンビートとの関わりは?

haruna:新演出を考え始めていた2017年に、初めて岐阜でプログラムが開催されると聞いて、演出として4年ぶりにミュージカルの現場に戻り、「コモンビート第二フェーズ」スタート!それまでは中部を中心に活動していたんだけど、2018年には東京で演出のサポート、翌年には転勤を機に大阪で演出と、地域を超えて活動するようになったよ。

なな:一気にフィールドが全国に広がっていったんだね。それって全部、ボランタリーで関わっていた時期?

haruna:そう。そしてその頃、「会社員じゃない生き方をしてみたい」っていう夢もあって。コモンビートは「100日間で終わるのが魅力」って思って始めたのに、気づけば10年近く関わり続けていて(笑)。それは「自分に合ってる証拠」だと思って、「会社員を辞めてコモンビートで働こう」、働くなら「ミュージカルだけじゃなく、国際交流も企業研修もやりたい!」と覚悟を決めたんだ。でも、コモンビートだけじゃなくて、「もっと多様な世界にも触れていたい」から、正社員ではなく業務委託という形で関わることにしたの。今では、離島専門の引越し屋さんや、国際交流プログラムの運営など、他の仕事も並行してやってるよ。

なな:「夢のために何かを辞める」っていう、その決断力がかっこいい!harunaは仕事を選ぶとき、どんな考え方や軸を大切にしているの?

haruna:実は、そんなに明確な軸とか、強いこだわりはなくて。「期待してもらえたらやる」とか、「今きた流れに乗ってみる」っていう感覚に近いかも。それと、「やってみたいな」って思ったことは、どんどん口に出すようにしてるんだよね。そうすると、「それだったら、こんな仕事あるよ!」って誰かが教えてくれることが多くて。思いを言葉にしておくことで、チャンスが自然と集まってくるなって思ってる。

コロナ禍を経て、新しい表現に向き合う

なな:なるほど。harunaが自分に合った仕事を自然と引き寄せてる感じがするね!覚悟を決めた「コモンビート第三フェーズ」は、どんなスタートだったの?

haruna:コモンビートで働き始めるタイミングでコロナ禍になってしまって…。私が担当予定だった鹿児島や新潟を含む全国6地域のミュージカルはすべてストップ。外出できない、海外にもいけない、みんなとも会えないーーそんな状況に社会的な悲しさはあったけど、「コロナ禍でも表現の場を失いたくない!」っていう想いから、オンラインプログラムの立ち上げにほぼ全部関わったよ。新しい働き方やオンラインが広がって、「世界中どこにいても働ける新しい未来が来るかも」と意外とポジティブにとらえていたね。

なな:さすがharuna。逆境を乗り越えるチカラがとても凄いね。その中で不安や葛藤はあったの?

haruna:正直、「背に腹はかえられねぇ!」っていう必死な気持ちだった(笑)ヒリヒリ感とか、みんなで歯を食いしばった苦しさとか、そういう感情も強く残ってる。オンラインという新しいコミュニケーションの難しさの中で、ちゃんと想いをぶつけて妥協せずにこだわり抜いたからこそ、「Jump in 週末留学」や「アジアンビートオンライン」は本当に価値あるプログラムになったと思う!「参加者の人生がそこから動き出した!」っていう瞬間があったり、「いつかリアルで会いたい!」って思える仲間もできて、感動したな。

なな:すべてが新しい挑戦だった中で、ちゃんと「妥協しなかった」っていうのがすごい。そして、2023年にミュージカルプログラムが再開してからは、どんな関わり方をしてるの?

haruna:今は「演出ディレクター」として全国のプログラムの練習づくりや配役、演出面のサポート、公演本番の舞台づくりに関わっています。
コロナ前にいろいろな地域の活動に関わったから、いい意味で「ここがいちばん!」みたいなこだわりはなくて(笑)。どの地域もそれぞれの感性やテンションがあって面白いし、心から共感しながら日々真剣に、全力で向き合えているなって感じてる。あと、私は「移動すること」が好きだから、全国をまたいで演出を考えられる今のポジション、すごく自分に合ってると思ってる!

なな:演出ディレクターは現場のキャストとも関わりが多いよね。その中でどんなやりがいや楽しさを感じてる?

haruna:私は「大人の目の色がかわる瞬間」をつくるのが好きなんだよね。頑張ってるキャストやスタッフに対して、「歌やダンス」という表現を通じて新しい目線や気づきのきっかけを渡せる。そういう瞬間が、たまらなく楽しい!

なな:harunaがいると場の空気がポジティブに変わるって感じてる人、多いと思う!

haruna:ポジティブへの転換はたしかに早い方かも!「一緒にいると元気になる」って言ってもらえるのは本当に嬉しいし、いろんな地域で経験を積んだことで物事を多面的に見る力がついてきたなって思う。だから、人に対しても自分に対しても、いろんな側面から考える習慣が自然とできてて、結果的に前向きに捉えられるようになってるのかも。

それに、全国の演出に携わる私のポジションは誰かに与える影響も大きい。100人の前に立つには自分をごまかせないから「正直でいる」っていうことはとても大切にしている。

次なる挑戦。今度は「自分の夢を、自分が先頭で叶える」

なな:harunaのポジティブさに何度も助けられてるよ!海外に関わることは今でも続いているの?

haruna:コロナ禍で一旦中止になったアジアンビートツアーは、2023年に復活して韓国へ行くことができたの。そして2024年には、ずっと延期されていた念願のインドネシアツアーも実現して、現地に着いたときは本当に感動したよ。

私は、人の目標に対して一緒に頑張りたくなるタイプで、これまでのアジアンビートも先頭に立つメンバーの想いに共感して続けてきた。でも、気づけば自分がリーダーになっていて…。「自分はこの“国際事業”に関わりたいんだ」「これは自分のプライドなんだ」って実感したんだよね。

なな:アジアンビートって、harunaにとってどんな存在?

haruna:「本当に会いたくなる一生の友だちを作ろう」「歌とダンスで言葉を越えよう」って理想に聞こえるけど、アジアンビートは、それが本当に叶うって、実際にその価値を私に教えてくれた。

社会はコロナを経て、海外に行き来しやすくなったし、海外のモノや情報も手に入りやすくなって便利にはなったなって思う。だけどその中で、「本物に出会うこと」や「実際に体験すること」の価値ってむしろ前より上がってるんじゃないかなって感じてる。
現地の友だちに直接教えてもらうことと、SNSで見ることって、やっぱり全然違う。観光じゃなくて、現地の日常生活にどっぷり入り込んで、違いの中で生まれる摩擦とか疑問とか、逆に発見できる喜びをリアルに体感できるのがめちゃくちゃ面白い。そこでいっしょに歌ったり、踊ったり、笑い合った時間は本当に一生の思い出になるし、そういう仲間って一生の友だちになると思う!

実際に自分がそういう体験をしてきたからこそ、これからも国際系のプロジェクトがあるなら私はその中心にいたいって思ってるんだ。

なな:それがharunaの「譲れない想い」なんだね。最後に、これからの挑戦はありますか?

haruna:今年の大きな目標は、「歌とダンスで言葉をこえるプログラム」を自分が作っていくこと。与えられた目標に対していろんな道筋を立てて、目標を叶えて越えていくことは得意なんだけど、ゼロから自分で目標をつくっていくことは自分にとってはすごく挑戦。誰かの夢じゃなくて、自分の夢を、自分が先頭に立って叶えていきたい。いろんな地域に関わってサポートすることが増えてきた私にとって、今、自分主体のコミュニティをつくることはドキドキで緊張もあるけど、それをするチャンスがきてる!と感じてます。

そして宣言します。「自分が先頭に立つ海外事業を実現させます!」日韓公演、洋上ミュージカル、英語公演、海外公演…まだ形はわからないけれど、コモンビート × 世界 にワクワクしてくれる人、私と一緒に面白いこと、やりましょう!


編集後記(ななより)

普段、中部で一緒に活動することの多いharuna。近くで見ていて、harunaのエネルギーの強さは知っていたけど、「期待されたら超えていく」ことで力をつけてきたんだなぁと実感。誰かの目標を一緒に叶えてきたharunaが、今度は“自分の夢”を、自分が先頭で叶えていくのがとても楽しみです!応援していきます。

次回の「パンゲア図鑑」もお楽しみに!