現代は、社会が変わりやすく予測が難しい「VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代」と呼ばれています。そんな中で、さまざまな価値観や背景を認め、活かし合う「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包括性)」が、個人や組織が成長するためにとても大切な時代になっています。
NPO法人コモンビートでは、さまざまな年齢や職業の社会人・学生100人が集まり、お互いの個性を響き合わせて創り上げる「100人100日ミュージカル®プログラム」を全国各地で開催しています。本ミュージカルプログラムの経験が、参加者の人生のキャリアやステップにどう生きていくのか。今回インタビューするのは、愛知県在住で自動車部品メーカーの企業内訓練校の指導員として活躍中の丸山榛華さん(通称「ぱる」)です。
彼女の仕事のキャリアやコモンビートのミュージカルプログラムの実践から学んだこと、今後の展望についてお話を伺いました。ぜひお読みください!
悩みを一人で抱え込みがち。仲間に頼ることができなかった
Q1: まず、現在の仕事について教えてください。
私は、自社の企業内訓練校で技能者のたまご(訓練生)を育成しています。訓練生は、将来製造現場を支える生産課・保全・工機・試験実験職場で活躍していく予定です。仕事では、技能的なスキルを教えるだけでなく、訓練生の心身の成長をサポートすることも大きな役割だと思っています。
Q2: 仕事をしていく中での課題はありましたか?
ポジティブな私は、周りからも「なんでそんなにポジティブになれるのか分からない」と言われ、周りを置いていく事がありました。何か問題があっても「まぁ何とかなる」と誰かに相談する事なく、自分一人で抱え込みがちでした。こうした自分を改善し、時には仲間を頼り、職場全体で価値を出していくようになることが大きな課題でした。

Q3: そのような課題をどう乗り越えたのでしょうか?
コモンビートのミュージカルプログラムに参加してから、大きな変化がありました。特に、チームの信頼関係の重要性に気づき、どう信頼関係を築くかを学びました。例えば、コモンビートのミュージカルプログラム中で、ブラインドサッカーを体験する機会がありました。「何も見えない状態で自分の身を仲間に預ける」のは思っていた以上に怖く、他者との信頼関係がいかに難しいかを体感し、今の自分には「心から仲間を信じる」事が足りないと実感しました。
また、「願いをのせて」というミュージカルのシーンの練習では、メンバーどうしの気持ちが通い合った時、歌に私たちの思いが乗った事を体感することができました。これは、仲間とのつながりがどれほど影響を与えるかを深く理解した瞬間でした。
これらのことを経験し、他者を受け入れ理解し頼ってみることで、周りを置いていくことなく業務遂行する事ができるようになりました。

お互いの繋がりや多様性をいかし合い、訓練生と共に成長できた
Q4: その学びが、実際の仕事にどのように活かされましたか?
コモンビートで学んだ「信頼関係」や「繋がり」の大切さは、仕事でも大きくいかされています。特に印象的だったのは、143名の訓練生と共に合宿研修を実施したときです。
最初は研修内容をどうするか悩みましたが、思い切って訓練生たちに研修内容の企画・運営を任せることにしました。結果として、訓練生たちはお互いの繋がりや多様性を活かす方法を積極的に考えてくれ、研修は大成功でした。
訓練生に任せることは容易ではありませんが、私自身が訓練生を信じて任せなければ育たない!そう覚悟を決めて取り組みました。結果、互いの個性を認め合う事を訓練生の育成にいかせ、また、訓練生との関わり方も見直せました。私自身も、指導員として成長する機会となりました。
Q5: 他に仕事での成果について教えてください。
私が一番実感した成果は、チームや訓練生の一体感が深まったことです。コモンビートのミュージカルプログラムで行われたアイスブレイクやアクティビティを、訓練生の指導でも事あるごとに実施してみました。訓練生自身が「つながりの大切さ」や「多様性理解」を体感する事ができ、風通しの良い人材育成を行えています。コモンビートのミュージカルプログラムに参加する前よりも、訓練生の心の成長が目で見てよく分かるため、人材育成を楽しく感じています。それは、私の仕事のやりがいでもあります。
また、訓練生は、企業内訓練校を卒業後、自社内の様々なものづくり職場に配属されます。配属職場は多種多様で、それぞれの得意領域も異なり、扱う機械も違います。時には協同する事もあるので、それぞれが持っている知見やスキルを共有することも大切ですが、決して簡単ではありません。しかし、訓練生の時から繋がりを見いだし、そこから対話を重ねられる事は、今後のものづくり職場において間違いなく品質を上げることにつながると感じています。こうした成果が、仕事における関係者との連携や成果を生み出す基盤になっていると思います。

企業内指導にとどまらず、もっと広い教育の場に活かしていきたい
Q6: 今後の展望について教えてください。
自分が教えることに一生懸命になるあまり、訓練生や職場の一員としての感覚を持つことが難しいと感じていた時期もありました。コモンビートで得た経験を、自分の職場内にとどまらず、もっと広く社会に目をむけて教育の場にも活かしていきたいと思っています。私自身が、教育の現場で「より良い方法」を模索している最中ですが、同じように悩んでいる方々とポジティブな変化を起こし、より多くの人が心の成長を感じれる機会を増やしていきたいです。

Q7: 最後に、読者にメッセージをお願いします。
「人生は一度きりなので、楽しまなきゃもったいない」という思いで、日々過ごしています。コモンビートを通じて、プライベートでも仕事においても、自分自身がどう変わったのか、内省を通じて深く考えられるようになったことが大きな収穫でした。もし今、内省が苦手な方がいたとしても、コモンビートのプログラムは、そのきっかけを与えてくれると思います。「変わるか変わらないかは自分との向き合い次第」だと実感しているので、ぜひ挑戦してみてほしいです。私自身は、思い切ってコモンビートに飛び込んで良かったです。人生を豊かにする素晴らしいきっかけになると思います!