違いによって生まれたわがままは価値になる See the difference〜個々からはじまる、モノとマチのデザイン〜 開催レポート | NPO法人コモンビート
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違いによって生まれたわがままは価値になる See the difference〜個々からはじまる、モノとマチのデザイン〜 開催レポート

2022年10月19日(水)、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)をテーマに、違いを知り、違いと出会い、違いとつながっていくための「See the difference」の第23回が開催されました!今回のゲストは、特定非営利活動法人D-SHiPS32 代表の上原大祐さんです。上原さんは、パラリンピックのパラアイスホッケー銀メダリストでもあります。

上原さん(写真真ん中)、投げキッスをしながらのご登場!

D-SHiPS32さんは、車いすスポGOMIという、街中で車いすに乗りゴミ拾いをするスポーツを提供したり、パラスポーツ大会を主催したりすることで、障害者と健常者が『体験』を共有し、子どもたちが夢を持って挑戦できる精神を育て、当たり前の事が当たり前に出来る社会を目指しています。

1人にフォーカスする事は、イノベーションと発明につながる

上原さんは他にも、041(ワンフォーオール)や、KIMONALL(キモノール)という活動もされています。

041(ワンフォーオール)では、車イスの女性のタイトスカートを履きたいという願いを叶えたスカートを開発しました。こちらは、もともとは車イスの方のために開発されたものですが、車イスユーザー以外の人にも人気になりました。

KIMONALLでは、上原さんご自身の「車イスでも着物を着たい」という願いを叶える、上下が分かれる着物を開発しました。こちらは高齢者の方にも人気だそうです。そして、元々は織物の町として栄えていた中能登町と連携し、障がい者や高齢者に着物を着て観光してもらえるようにしたことで、町の活性化に寄与しました。上原さんは「物をデザインしたら、町をデザインしたことにもなった」と言いました。

041(ワンフォーオール)も、KIMONALL(キモノール)も、どちらも1人の願いから生まれた商品です。上原さんの「一般的には、企業は多くの人をターゲットにしなきゃいけないから、多くの人の意見を聞いて何かデザインする。そうすると、中途半端な意見しか吸い上げられず、掘り下げられず、良い物ができない。でも、1人の人にフォーカスすると、課題を深掘りできるので、イノベーションと発明が起きやすい。」という言葉に、参加者のみなさんも頷いていました。

上原さんが開発に関わった物以外にも、例えばライターは、元々は両手でしか使えなかったマッチを片手でも使えるようにしたものであり、それが便利で最終的にはみんな使っているのだと教えてくれました。

わがままを価値にする

1人にフォーカスすると、面白いことが広がることがイメージできました。しかしそれは、わがままだと揶揄されることも多そうです。
しかし「わがままを価値にする」というキーワードで活動している上原さんは、「意外とそんなことはない。」と言いました。
文句や苦情ばかり言っているとわがままで終わってしまうけど、そこにアイデアを掛け算すると、価値が生まれたり、物が生まれたりするという言葉が、とても心に残りました。

知るを増やす

車椅子ユーザーに体育館を貸してくれないという問題があると、上原さんは教えてくれました。断られる理由は、「タイヤ痕が付く。怪我されると困る。」だそうです。しかし、シューズ痕とタイヤ痕は変わりませんし、健常者も体育館で怪我します。その断り文句は、勝手な思い込みや固定概念だと上原さんは言いました。
しかし、それは固定概念であるということを一回伝えれば知ってもらうことができ、そして体育館を使うこともできるようになることもあるそうです。ちょっとした簡単な知識を届けてあげるだけで突然変わることがあるのだと上原さんは言いました。
上原さんは、「知る」を届けること、そして増やすことが大事だと教えてくれました。

街のデザイン

今までで一番成功したパラリンピックはロンドンだと言われているそうです。そして上原さんは、その街のデザインをした人と話す機会があり、すごく重要なキーワードでおもしろいと思われたのが、「当事者と一緒にデザインするwithデザインか、当事者起点でデザインするbyデザインを基本的にロンドンはしている」のだそうです。対して日本は、withoutデザインであると言います。上原さんはそれをファンタジーデザインと呼んでいて、もっとリアルデザインにしていくべきだと教えてくれました。

上原さんは、もっとwithデザインにできるものをいくつか教えてくれました。

1つ目はベビーシートです。
大きくなってもおむつ替えが必要な障害を持った子どもたちがいます。なので本来はベビーベッドではなく、赤ちゃんも、障がい者も、高齢者も使えるようなユニバーサルベッドが必要です。

2つ目は鏡です。

こちらの鏡では、頭の上の毛先しか遊べません。いくら毛先がかっこよくったって、ネクタイが歪んでいたらどうしようもないという上原さんの発言に、参加者のみなさんは笑っていました。

3つ目はこちらのトイレです。

これではトイレに車椅子でアクセスできません。「とりあえず手すりつければいいでしょ」という、まさにwithoutデザインで作られた物だと言えるでしょう。

他にも、上原さんご自身の体験で、傾斜が急なところに作られた車椅子用駐車場から、上原さんの車イスが下っていってしまったお話や、Webサイトに「バリアフリーである」と紹介されていた飲食店に行ったら、ビルの中にそのお店がありそのビル自体がバリアフリーではなかったために入れなかったお話、とある駅に降り立ったら階段しかなく、駅員さんもホームにおらず、「助けてー!」と叫ぶしかなかったお話などをしてくれました。

 

「助けてー!」の顔をされる上原さん

では、これらの社会障害はなぜ生まれるのでしょうか。それは「足りない」からだと上原さんは言います。

・障害/病気の認知が足りない。
・人と人のコミュニケーションが足りない。
・多様な人を知る教育の機会が足りない。
・困っている人の情報が足りない。
・困っている人との会話が足りない。
・誰かをサポートした経験が足りない。
・誰かが困っているかも知れないという想像力が足りない。

上原さんは「足りない」を減らすには、「自分事化」よりも「友達事化」すると良いと教えてくれました。想像力が足りないことは、「友達事化」すると想像できやすくなる。さらに、一緒に時間を過ごしてみると「with化」できると言いました。

しかし、障がい者の方と一緒に過ごす機会は日常にあまりないですし、関わってみたとしても「知らない」ことがあるせいで、傷つけてしまうかも知れないという不安があります。参加者の方からも、このような質問が出ました。

「「知らない」ことが罪であると分かりました。でも「知る」ために障害を持っている方に話を聞く時、何もかも地雷になってしまう気がします。どうしたら良いのでしょうか。」

上原さんは、「健常者同士でも、「どこまで聞いて良いんだろう?」というのはある。障がい者の方も人によって言える人も言えない人もいる。でもパラスポーツ系の人は障害を受け入れている人が多いから言える人が多い。そういう人に聞くと良い。」と回答してくれました。

健常者と障がい者という関係にとらわれず、人と人として会話をしながら、お互いのコミュニケーションを大切にすれば良いのだと気づきました。

最後に、上原さんがおっしゃったことで1番印象に残っているセリフを紹介します。

「自分が「嫌だな」と思ったことを、次世代に残すことほど無駄なことはない。自分の見つけた課題を解決してから死にたい。だからアイデアを言いふらして、人と繋がっていく。言いふらすとスピード感が増す。パクられたら私の仕事が一つ減るのでハッピー。死ぬまでに解決しなきゃいけないことがいっぱいあるから。それで子供たちが幸せになれるから嬉しい。」

イベントの最後は、明日から実践したい小さな一歩をシェアする「アクション宣言」!
介助犬になる予定のりんごちゃんも一緒に写ってくれました!

ゲストの上原大祐さん、参加者のみなさん、学びある時間をありがとうございました!

インクルージョンチーム 学生インターン
橋本佳恋(かっきー)