できないを隠さない、それぞれの在り方を尊重するこころづくり See the difference〜インクルーシブから始まる生きやすさ〜開催レポート | NPO法人コモンビート
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できないを隠さない、それぞれの在り方を尊重するこころづくり See the difference〜インクルーシブから始まる生きやすさ〜開催レポート

12/22(木)、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)をテーマに、違いを知り、違いと出会い、違いとつながっていくための「See the difference」の第26回が開催されました!今回のゲストは、一般社団法人Otonoha代表理事の小林未歩さん(以下、こみほさん)です。開催レポートを安達亮(りょう)がお届けします。

Otonohaさんはコモンビートの活動とも近いところに手段も理念もあるなと感じていたので、私自身も今回のイベントを楽しみにしていました。イベントの参加者には療育に関わっている人、子どもの教育に関わっている人、そして視覚障がいがある方や聴覚障がいがある方も参加されていました。

そして今日はSee the differenceの運営を担っているコモンビート事務局の学生インターンの橋本佳恋(かっきー)がはじめてメインモデレーターに挑戦!緊張しながらも、こみほさんに質問を投げかけて、「インクルーシブから始まる生きやすさ」をテーマとしたトークが始まりました。

Otonohaの活動について

一般社団法人Otonohaは個人が感じる生きづらさと社会がつくる障害を減らすことを企業理念として活動していらっしゃいます。「For Social」として、スペシャルニーズのある子どもに関わる大人たちを対象に、幅広くインクルーシブな社会を作るために「障害」について複合的に深めるプログラムの開発・研究を、そして「For People」としてスペシャルニーズのある子どもを対象に、表現教育をツールに「自分を知る」「安心して自己表現・コミュニケーションを楽しむ」プログラムを展開しているそうです。

ゲストのこみほさん(右下)

かっきーの質問によりどんどん活動が深掘りされていきました。

・For Social と For Peopleの両方やろうと思ったんですか?
最初は子どもたちだけを対象に活動しようと思ったけど、取り巻く大人たちを対象として価値観や方法を届けたほうがより多くの子どもたちにアプローチできると思ったので。

・なぜ表現教育をもちいているんですか?
私自身が表現教育のワークショップを受講して自分自身を変える背中を押してもらった原体験があったのと、子どもたちが変化していく様子を目の当たりにして、これだ!と思いました。

・中/高校生を対象にしているのはなぜですか?
多感な時期だから。スペシャルニーズがなくても人との違いを敏感に感じる時期に「ひとってもともと違うよね」「違いについて学ぶ機会」を届ける必要を感じています。教育委員会とも連携しながら、自分自身について知る、違いについて知る授業を展開しています。

・生徒のその後の変化は?
学校って「みんな一緒に仲良くしなきゃだめ」っていう風潮があると思いますが、Otonohaとしては「好き嫌いがあるのはしょうがない。合わないと思ったら合わなくていい、合わないけど傷つけあうのはよくないよね」というような学校の先生たちが伝えきれないメッセージを届けています。「ひとりにされることって傷つくんだよ」っていうメッセージを伝えた学校から「ひとりになりがちだった生徒が、その後グループを組むときに周りの生徒から声をかけられるようになった」という声が寄せられたこともあります。

生きづらさは誰にでもある

まだまだ話は続いていきます。「発達障害の診断がある・ないに関わらず、生きづらさは本当に誰しもが抱えること」だと、こみほさんは強くおっしゃってました。確かに、学校では感じなくても家庭では感じているかもしれないし、濃淡もあるし、表出化していない場合もありますよね。これは「ひとりひとりの違い」という観点からしても、人の数だけ生きづらさは存在すると言えるかと思います。そして、お互いに「違いがあるんだ」「生きづらさはあるんだ」と思い量り、「あの人変わってる」とか「近寄らないようにしよう」とか遠ざけるのではなく、ひとりひとりの声を聞いて背景を知ろうとすることが大切なのではないでしょうか。

「できない」は可能性を広げる起点だ

Otonohaさんもコモンビートも表現教育を手段にしているのが共通点です。歌とか踊りって得意不得意があり、どちらかというと苦手だととらえる人の方が多いと思います。「できる」を基準にするとそれに比べた「できない」ことがマイナスだととらえるけど、「できない」を基準にすると「一緒に挑戦しよう」「一緒にできるようになろう」「どうやったら改善できるだろう?」ってポジティブに取り組めるようになる。同じ「できない」なのに基準をどこに置くかによって捉え方が変わっていくって面白いという話題で盛り上がりました。

難しさをいかに楽しさに変えるか

Otonohaさんのミュージカルではスペシャルニーズがある子とそうではない子が同じ空間で活動しています。「できる」と「できない」に差が起きやすい中、彼らとどのように向き合っているのでしょうか。

こみほさんは「難しさをいかに楽しさに変えるか」が重要だと語ります。それぞれの在り方を肯定的に捉えていく、それが世間的におかしいと思うことでも、隠さないでオープンにしていく、「おかしい」「変だな」を逆転させて「おもしろい」「かっこいい」に変えていくということが秘訣だそうです。

役割を付与する(やりたい・ありたいを尊重する)

ワークショップである子どもが踊るのが嫌で「動きたくない!」と言い出したそうです。そこでこみほさんはその子に対して「踊ろうよ!」って声をかけるのではなく「そうなんだ、じゃあ「監督」の役割でみんなが踊っているのを見てみる?」と声をかけるそうです。ある子どもは踊りの時間に「電車が見たい」と場を離れてしまいがちでしたが、「警備員」の役割をつくって、その場にいない理由を、ただ「いない」のではなくて、「警備に行ってるんだよ」と演出して他の子どもたちに知らせて隠さないようにしているそうです。また、子どもたちの純粋な「興味」によるコミュニケーションや「創意工夫」が生まれる瞬間にいつも感動させられているそうです。そういう役割を付与して、踊らなくても居場所ができて孤独を感じなくなるという仕掛けや向き合い方がインクルーシブな場を生み出していくんだろうなと思いました。

表現教育だからこそ、芝居の役を配役するようにクリエイティブに居場所をつくっていける、その子の在り方をやりたい・ありたいを尊重していきやすいのかなと思いました。

インクルーシブな場をつくるには

さらにこみほさんは話を続けます。「ミュージカルは歌・踊り・芝居と実はやることが決まっていて、決まっていると飽きてしまったり、ついていけない子どもたちもいる。一方でついてきてくれる子もいる。そんな時についてっている子たちに、ついていけない子たちがどうしてそうなのかを隠さずに伝えていくことがインクルーシブな場なんじゃないかと思う」と伝えてくれました。

何か場をつくるときには、参加者がその内容や流れに乗っていることが「あたりまえ」になり、そうじゃない人は「逸脱」に捉えてしまいがちです。ですが、そこをいかに隠さずに内包したり、そういう場面をみかけたときに無理矢理に従わせずに、違う在り方を、そのまんま許容できるかどうかが、インクルーシブな場づくりの大切なポイントだと思いました。

生きづらさより「生きやすさ」

最近こみほさんは、「生きづらさ」よりも「生きやすさ」を言葉として使うようにしてるそうです。「生きづらさ」は「私は関係ない」って思ってしまうとすぐに他人事にしてしまうけれど、「生きやすさ」であれば「私にも関係ありそう」と思って、みんなで追い求めるものになるのではないかと考えているそうです。

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の観点からしても「自分ごと」にできるかどうかはとても大切なことだと思います。「違い」には双方向性が含まれているので、自分とあなたの関係性(U&I)に置き換えられた時に、ひとりひとりの在り方が尊重されて生きやすさやウェルビーイングにつながっていくのではと改めて考えさせられました。

■参加者の声

・知らず知らずのうちに自分の基準が入っていることに気づかされました。そもそも、まとめようとしないことや、そもそもこの場にいるだけで頑張っている、我慢をしているというような自分が持っている前提を覆すような俯瞰した問いを持つといいのかなと感じました。ついついゴールに向かっての達成を目指すことが多いのですが、それぞれを活かす先に最高のゴールがあることを信じてみるのもいいなと思いました。見方を変えてみたくなる面白い時間でした!

・すごく面白かったです! ゲストトークも面白かったし、参加者同士のグループトークでも自分にはない視点からの質問が出ていたりして発見がありました!☺︎何より、参加者の中にもいろいろな違いがあって、その違いを受け入れる対応と雰囲気がすごくいいなと思いました!

・無意識のうちに自分の基準で相手を見てしまっているということに気付かされました。だから今後は相手の基準で物事を見ていきたいと思います。あと、相手が何がしたいのか、何を考えているのか、わからないときは同じことを相手と一緒にやりながら考えていこうと思います。そして、「生きづらさ」「生きにくさ」というネガティブな言葉じゃなくて「生きやすさ」というポジティブな言葉を使って、他人事でなく自分事として捉えて自分も含め全員に当てはまることだから、みんなで考えていきたいと思います。

■編集後記

今回はコモンビートと同じく「表現」を手段に「違い」をテーマに活動されているOtonohaさんがゲストだったからこその共感がたくさんありました。正解のない「表現」というゾーンだからこそ、枠にはめずに自由にそれぞれが自分らしく楽しむ、全員が同じことを強いられない空間がつくられるのではないかと改めて思いました。そういう場が世の中にたくさん増えていくといいですよね!Otonohaさんの活動を応援しています!

2022年度内最後のSee the differenceでした。今年も年間20回の開催を目指して運営していきます。今後も違いに会いに遊びにきてください!

See the difference
モデレーター 安達亮(りょう)