「違い」と出逢う冒険へ! ーある新人航海士の手記ー 第2章 第2話「〈スタンダード〉の荒波に揉まれて」 | NPO法人コモンビート
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「違い」と出逢う冒険へ! ーある新人航海士の手記ー 第2章 第2話「〈スタンダード〉の荒波に揉まれて」

『Diversity Journey』とは、「違い」を切り口に「わたし・あなた・社会」に向き合い、対話とアクションを通して「多様性への身だしなみ」を学ぶ、1ヶ月間のオンラインプログラムです。

参加者の方は船の乗組員として「多様性という大海原に繰り出す船旅」というワクワクする世界観の中へ飛び込んで学ぶことになります。

そんな旅の内容を伝えるのは、長期インターン生・ジュン。
彼女はこの船の新人航海士として乗船し、船内で起こったことを記録しているようです。

ではさっそく、今回は11月5日(土)の旅について書かれた彼女の手記を一緒に覗いてみましょう!


 【22日目】

2022年11月5日(土)

▶︎DJ Radio at 9:40

多様性の大海原を進む旅はいよいよ終盤に差し掛かってきた。
来週にはDJ Showcaseと呼ばれる、個々人が100日間チャレンジするソーシャルアクションを発表するイベントがあるからだ。

乗船員はそれに向けて思考を巡らす時間が増え、私たちのモヤモヤに比例するかのごとく海上の空を分厚い雲が覆い、言葉の数だけ激しい雨粒がデッキを打ち付ける。
これまで触れてきたたくさんの「違い」に私たちの船も心も揺らされている。
まさに荒波の中でどうにか海路を見出そうとしているのだ。

「旅の天気は晴れていてほしいですよね、普通。雨が好きな人が理解できな・・・」
と言いかけた私はすんで止まった。
私の普通は、相手の普通ではない!

この私に限った話ではないが、
「っていうか普通にさ〜」
「ぜんぜん普通だって!」
「普通だったらこうじゃん?」

と普通の正体を具体的に言葉にできずとも、こんなことを誰しもがポロッと言うだろう。
しかし、誰の何が私たちの〈スタンダード〉=普通を作っているのだろうか。

今朝のDJ Radioでは、そんな私の疑問が解消された。
ケンジは、ある二つのワードを使って話し始める。

◯ミーム 脳内に保存され、他の脳へ複製可能な社会的、文化的な情報のこと。
◯内面化 社会が有する価値と規範を、自分の価値と規範として受け入れること。

つまり、ミームによって広まった差別的な価値観は、従来の私たちの価値観を塗り替える。塗り替えられたその価値観で生活をしていくことで、知らず知らずに差別的な思考、感情が私たちの内側に形成されていくのだ。

・・・ちょっと難しい?では例え話をしよう。

ーーーーー

あなたは、朝食にパンを食べるのは普通だと思っている。
しかし、ある日テレビから流れてきたニュースでは「朝食にパンなんて食べる人はおかしい。朝食にはご飯を食べる人が普通だ」と言っている。
その次の日には友達が、そのまた次の日には家族が「朝食にはご飯を食べる人が普通だ」と言うようになった。
そのまたさらに次の日に、いつの間にかあなたはニュースキャスターや友達や家族と同じように「朝食にはご飯を食べる人が普通だ」と考えるようになり、「朝食にパンなんて食べる人はおかしい」という考えが生まれる。
自分の〈普通〉が他者の〈普通〉を攻撃し始め、ついにはパン派とご飯派の大戦争に発展するのであった。

ーーーーー

・・・なーんて、こんなのはくだらない例えかもしれない。
だがカッコの中の台詞を以下に置き換えて考えてみてほしい。

「女性が働きに出るなんておかしい。女性は家にいて家事をするのが普通だ」
「男性が家事育児をするなんておかしい。男性は外に出て仕事をするのが普通だ」

どうだろうか。
置き換える言葉を性別のみならず、人種、宗教、政治などで考えることもできる。
つまり、差別というのは決して朝の食卓の上だけで起こるものではないのだ。

差別的なミームや内面化に抗うには、勉強あるのみ。
頭を悩ました先にこそ晴れ間があると信じよう。

ところで、みなさんはきのこ派だろうか、たけのこ派だろうか・・・
と聞くといらない争いが生まれそうなのでこの辺にしておく。

▶︎船内図書館 at 12:30

ここ数週間の間で、図書館で紹介された本を読み耽るメンバーの姿を船内でちらほらと見かけるようになった。
これは私の持論だが、物語を読むことで人は優しくなれると思う。
物語とは、知らない人物や世界を読み手が積極的に受け入れることで楽しむことができるものだからだ。
この要素は私たちの普段のコミュニケーションにも通ずるところがあり、知らないものを知ろうとする姿勢は相手への優しさでもあると感じる。

今回の船内図書館では、そんな姿勢を持つ人が多数いる、穏やかな水面へある問いが投げ入れられたような気がした。
それは、相手への優しさの前に自分自身に優しくできているか?という問いだ。

紹介された本はこちら、『みんなのわがまま入門』

この書籍の中には「普通幻想」というワードがある。
誰しもがそれぞれの普通を持っていて、それぞれが持つ普通で相手のことを想像して決めつけてしまいがちなことを指している。

「私の中の普通では朝にパンを食べている、けどご飯だって食べてみたい」
までならまだしも、
「だからご飯食べてる人ずるい!ご飯が食べられる人はきっと米農家さんと仲良しなんだ!(?)仲良くするな!ご飯食べるな!(??)」

・・・となるのはまさに普通幻想にはまっている状態だ。
これを解決するには実際に朝にご飯を食べて、朝にご飯を食べたいという己の欲求を叶えるしかない。

みなさんはこういった経験はないだろうか。
もしかしたら今こういう心の状態になっている人もいるだろう。
そうしたら、躊躇せず自分のわがままを満たしてほしい。
自分に優しくすることで自身が満たされれば、「ご飯美味しいよねー」と他者を許容することができるはずだ。

とこれまでパンとご飯の例えを使ってきたが、正直に言うと私は朝にうどんを食べるのが好きだ。これもまた多様性・・・。

夜にはすっかり雨も上がり、海は静けさを取り戻した。
ここで、嵐の中でもメンバーへの配慮と笑顔を忘れずにいたメインナビゲーターのぽすさんに気になっていたことを聞いてみる。

「ぽすさんはどうしてこの船旅をしようと決めたんですか」
すると彼女は、
「今まで私は世界を旅をしてきて、国の違い、人種の違い、言葉の違い、色んな違いに出会ってきたからこそ、個人と個人の違いっていうもっと根本的なところをこの船旅を通してみんなに感じてほしいんだよね」と真剣に語った。

この船の上で行われている様々なアクティビティには「違い」を知るための趣向が凝らされているが、それもぽすさんの想いから生まれたものだろう。
そんな旅も残すところ約一週間。
これからは、この広くて深い海を自分の力で進んでいく準備を整えていく時間だ。

うーむ・・・ふむふむ・・・なるほど・・・。
「普通」ってほんとになんなんですかね。
場所や時代が変われば社会も文化も変わり、普通というものの実態も変わっていきます。
それなのに普通を求められ、普通を求めてしまう私たちがいるのも事実。
お互いの普通の正体に向き合っていくこともまた、多様な価値観がある社会を実現するためのソーシャルアクションかもしれません。
この航海日誌も残り2話!
今後の冒険もどうぞ最後まで見届けてください!

 

Diversity Journey第4期プログラムの参加者募集も始まっています。

説明会では、プログラム内容の紹介はもちろん、参加者同士で対話する時間もあります。ぜひいらしてください!

▼オンライン説明会
11/29(火) 20:00-22:00
12/1(木) 20:00-22:00
12/12(月) 20:00-22:00
12/19(月) 20:00-22:00

申し込みフォーム
https://commonbeat-dj4th-intro.peatix.com/

※説明会に参加せずとも、本プログラムへの参加は可能です。

Diversity Journeyのプログラム内容は、団体Twitter・インスタグラムストーリーでも随時情報発信中!
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