人生アンサンブル_03 心もとない自分らしさを抱きしめて ──ミュージカルと仕事のはざまで芽生えたもの | NPO法人コモンビート
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人生アンサンブル_03 心もとない自分らしさを抱きしめて ──ミュージカルと仕事のはざまで芽生えたもの

ダイバーシティ&インクルージョンは、わたしとあなたのこと──。コモンビートは、「わたしとあなた」という一人ひとりを起点に、個性が響きあい、多様な価値観を認め合える社会を目指して活動しています。こちらの「人生アンサンブル」は、コモンビートのメインの活動であるミュージカルに参加者がどのような思いで関わり、そこから仕事や日常生活においてどんな変化が起こっているのかをコモンビート広報室がお届けするシリーズです。

あの人のようにはなれない…

今回の主役は、皆さんの周りにいそうで、もしかしたらあなたに近い存在かもしれない「りか」です。「頑張りたい」とは思うけど、周りの人の活躍を見て「あの人のようにはなれない…」となかなか自信をもてない。そういうことは仕事や勉強や地域活動などで、みなさんも思ったことがあるのではないでしょうか?

りかさんは、元々ミュージカルが好きで、歌うことも大好き。だから、友人が「コモンビートのミュージカルに出演した」と聞いて以来、ずっと気になっていました。コモンビートのSNSをフォローしていたら、コロナ禍を乗り越えて公演を再開するとのお知らせが届き「今しかない!」と、すぐに参加を決めました。ここから、彼女の新しい物語が少しずつ始まります。

くつがえされた「それなり」のイメージ

コモンビートのミュージカルを観たことがある訳ではないりかさん。「もし、適当な稽古」「それなりの舞台」だったら、せっかく飛び込んだ意味がない。そんな一抹の不安を感じていました。もしかしたら、「成長しよう」「何かのきっかけがあるかも」と思って入った場だからこそ、意味のある苦労を求めていたのかもしれません。

では彼女が経験したものは、実際どうだったでしょうか?りかさんに聞くと、「素人だからという妥協は一切なかった」「熱量が高く、一人ひとりが個別の目標を持ちながらも一丸になっている」「仲間が互いに助け合う」とぽんぽんと嬉しそうに答えてくれました。コモンビートの稽古は、誰かがアイデアを出せば、別の仲間が積極的にのっかり、そこから更にいいアイデアが生まれていく、そういう循環の場でした。とは言え、熱くなければいられない訳ではなく、細かな気配りが互いに行われ、その人のあり方で関われる所ということです。

願いをのせて、何かを変える一歩へ

ミュージカルの終盤に、「願いをのせて」という歌を合唱する場面があります。この曲を練習で初めてみんなで歌い、それぞれの声が合わさった瞬間、仲間の歌声、ハーモニー、そこに込められた思いに圧倒されて、りかさんは涙が止まらなくなったそうです。自分たちの持っている身体はこんなにも力を持っているんだ、と確信しました。このとき、世界でも日本でも戦争や差別など、あらゆる「違い」が争いを生んでいるということに、彼女は思い至ります。

そんな現実に無力ささえ覚えるまさに今、この”希望のメロディー”を絶対に届けるのだ、自分たちがそれを、自分自身の身体で表現するのだ、と思いを新たにした経験でした。自分も社会も…何かを変える一歩、そのきっかけは必ずある、そう思ったそうです。

心もとない自分らしさ、それでいい

実は、りかさんは、ミュージカルを始めた頃に、新しい職場での仕事も始めていました。「ミュージカルも仕事も頑張らなきゃ!」と気負っていたと言います。それは、周囲の期待に応えられるのか、という不安の裏返しでもあったかもしれません。今、仕事にりかさんはどう向き合っているのでしょうか?「魔法みたいに、すべてがぱっと変わる訳ではありませんが」と少しはにかみながら語ってくれました。目標とする人に追いつけるか自信はないけども、変な不安はなくなってきたそうです。だって、コモンビートで仲間からたくさんの言葉をもらったから。

「自分はこう思う」「あなたはこう見える」「あなたはこんな良いところがある」…りかさんは、少しずつ心が軽くなり、徐々に視界が開け、「もっと自分を高めたい」「周囲に輝いている人がいたらそれを伝えたい」と考え方と行動が変わっていきました。目標とする人はいる、それはそれ。自分は自分のやり方で、気楽に構えて、地に足を付けて前進すればいい。今、そういう心持ちになっていることを、静かだけど熱のこもった言葉で伝えてくれました。

心もとない自分らしさは、今も変わらない。だけど、急がなくていい、その状態を抱きしめていられるようになった。コモンビートを通じて芽生えたこの感覚があれば大丈夫。きっと自分らしさは、無理矢理つくりあげるものではなく、すでにそこにあるものだから。


当初は劇場で上演する姿が想像もつきませんでしたが、今は本番が待ち遠しい!濃い練習を重ねてきて、「このキャストの、この場面を見てほしい!」というポイントがいくらでも言えます。
このコロナ禍において、80人超が舞台に立つのは相当チャレンジング。それでも「なんとか幕を開ける」、「今、作品を届ける」という思いで走っています。
本番の90分間、一人ひとりのお客様の胸に何かが響く、そんな空間をつくりたいです。沢山の大人によるエネルギー溢れる舞台を届けたいと思います!


最後にそう語ってくれたりかさんをはじめとした多様なキャストが出演する、ミュージカル「A COMMON BEAT」再開記念シリーズ・関東公演は、7月16日(土)に本番を迎えます。ぜひ、ひとりひとりの物語を味わいに、劇場にいらしてください