もう5年以上前のバレンタインの日。
土手で朝のジョギングを終えて、自転車をとめた場所に向かってみると、見知らぬおじさんが私の自転車をいじっていた。そして近くの小さな印刷屋さんに入っていった。
その隙に駆け寄ってみると、ナント鍵が外されているではありませんか!
私は自転車から少し離れて、そのおじさんが戻ってくるのを待った。すぐ戻ってきたおじさんに「今だ!」と思って駆け寄った。
「おじさん、なんてことするんですかぁー!!!」と私。
おじさんは「あ、ごめんごめん。すぐ直す」とうろたえた。
でも放ってしまった部品が見当たらない・・・
印刷屋さんからペンチを借りて、この作業を行ったらしい。
私は、印刷屋さんも共犯だと思い、そのおじさんと一緒に印刷屋さんに駆け込んだ。
人のよさそうなおじいさんが出てきた。
「おねえちゃん、本当にごめんよ。突然ペンチを貸してくれと言われて、あまり関わりたくなかったから貸してやったんだ。
まさか自転車を盗もうとしてたとは・・・」
と言って、そのおじさんに「おまえは二度とここに現れるな!」と怒鳴った。
彼はそそくさと逃げていった。ホームレスでこの周辺を最近いつもうろついていた人らしい。
印刷屋さんのおじいさんは、とてもすまなそうに私に2千円をくれた。修理代として・・・
それはもらえないと断ったが、おじいさんも引かない。
仕方なく受け取り鍵を直した。
で、おつりを返しに行くついでに、その日がバレンタインだったのでチョコレートを買っていった。
そのおじいさん、とっても喜んで一緒にお茶を飲みながらチョコレートを食べた。
その後も何度かジョギング帰りにそこに寄って、おじいさんとお茶をして楽しく過ごした。
バレンタインの珍事件。ひょんなことからステキな出会いがありました。