こんにちは、8月17日の練習を、黄色大陸の芝琢也(たくや)がレポートいたします。
この日、8月17日の練習ですが、顔合わせ合宿から数えて
ちょうど13回目の練習となります。まさに、全26回の練習の折り返し地点。
このタイミングで行われたこととして、まずは写真撮影が行われました。
近々またレポートにも登場することだとは思いますが、お客様ひとりひとりにお届けする「Gカード」と呼ばれるメッセージカードに使われる写真、そして、本番にお客様にお配りするパンフレットに掲載される個人写真の撮影を行います。
これらの写真を本日に撮影する理由…それはもちろん製作や納入といった事務的な理由もあります。
ですがそれ以上に、この100日間のミュージカルプログラムのちょうど半分が過ぎ、折り返し地点を超えたこのタイミング……
つまり、キャストとしましても、右も左も分からず不安と緊張で押しつぶされそう……というわけでもありませんが、かといって、決してこの挑戦に対して完成された自信が満々というわけでもない……
そんな、期待と不安、自信と謙虚、大胆さと慎重さ、冷静と情熱がほどよく入り混じったこの時期に撮影を行うことにより、舞台上で非日常を演じる私達とはまた違う、100人が本当に伝えたいであろう、素顔の自分、素人の自分、等身大の自分をパンフレットへと落とし込んで表現できるところが大きいでしょう。
さて、先程から何度も「折り返し地点」と言う表現を用いさせていただいております。
これは、ひとえにこの100日プログラムをマラソンのような長期戦へと比喩した上でのことですが、もちろんこのプログラムは、マラソンのように、コーンが設置されて同じ道を折り返して走り続けるわけではありません。
折しも似たようなタイミングで後半シーンも開幕されましたが、折り返し地点といえども、決して同じ道をたどるわけではないのです。
本日、新たに導入された「リバース」というシーンは、まさにそのことを如実に表しているといえるでしょう。
このシーンは、後半にて戦争で全てを失った住人が、わずかな希望の光を見出して、活力を取り戻す最初の一歩となるシーンです。
よくカタカナで「リバース」と表現されるために、忘れてしまいがちですが、これは決して「リバーシブル」などのようなカタカナ語にも登場しているような、「Reverse」ではないのです。
そう、この「リバース」のシーンの、正式名称は、
「Rebirth~未来へつなぐ鼓動~」
「リバース」は「Reverse(逆転)」ではなく、「Rebirth(再生、復活)」。
「Re」というのは、「再び」を表す英語の接頭辞ですが、それが「Birth(誕生)」にかかって生まれた言葉です。
前回に、戦争を象徴する「悲しみ・憎しみ・憤り」を全面へと押し出す練習を経験した私は、ふと思ってしまいます。
これが、「Reverse」なら、どんなにいいだろうかと。
劇中でも歌われている「愚かな過ち」である戦争。
それを「Reverse」つまり時の流れを「逆転」させて、戦争そのものをなかったことにできれば、どれほどいいだろうか……と。
しかし、そんなことはもちろん、現実世界では不可能です。
戦争をなかったことにはできない、争いの道を選んだ過去を変えることはできません。
ですが、未来は……。
そのために、全てを失った私たちは、ゼロから、再び生まれいでる、つまりは”再生”を行い、己の力で未来を切り開く必要があるのです。
今回の練習に対してもそう、このプログラムのちょうど半分、「折り返し地点」ではありますが、もちろんこの先、来た道を「Reverse」ではありません。
私達キャストが生まれ変わることはありませんが、それでも新たなシーンの幕開けに、気持ちは一度リセット、入れ替えて、新鮮さを復活させて臨みたいところです。
そんな気持ちのまま、またしても新たなシーンが導入されました。
そして、なんとそのシーンは、フィナーレ、つまりミュージカルの締めくくりのシーンです。
キャストひとりひとりがしっかりとお客様へと挨拶、お辞儀を行うこのシーン。
列を組んで前から順に屈んでいくことにより、どのキャストも一度は”最前列”にて、お客様へとお顔向けができるのです。
そして最後に全員に、右を向いて一礼、次に左を向いて一礼、最後に正面を向いて深く礼をする。
この何気ない動作の中で、私達キャストはひとつのイメージを膨らませなくてはいけません。
もし…もしもですよ、お客様がほとんどお越しになられず、ホールがガラガラだったら……
ほとんどのお客様は中央の席へと固まるでしょう。
となれば、いちいち、右に礼、左に礼……とする必要などありません。
右→左→中央へと、180°に向けて広く行う三礼は、公演当日、私達の眼前に1800名ものお客様がお見えになった満員の舞台があるからこその所作となるのです。
そもそも、お礼の挨拶、お辞儀を行うという行為自体が、これまでやってきた大陸ダンスや戦争などのシーンといった、「非現実世界の演技」とは一線を画し、「舞台・観客・役者」という現実世界の要素を明確に象徴しております。
そう、何よりも意識するべきは、お客様の存在。
本日の練習は、「本番にお客様に対して配られるパンフレットやカードの撮影」に始まり、「本番にお客様に対して行う挨拶の方法」まで導入されました。
何気ない……本当に何気ないことから、徐々に、徐々に本番のビジョンが私達へと染みこんできているのを感じております。
ですがビジョンをイメージするだけでは舞台は完成しません。
やはり、多くのお客様に来ていただくのは、私たちの小さな活動の積み重ねが重要。
というわけで、本日もチケットに関してのグループトークが行われました。
一人がやれる活動やアイデアには限界があるでしょうが、それが100人集まれば
斬新な広報の方法をシェアしたり、または積極的な姿勢に刺激をもらったり…
チケット活動中は、ふいに孤独を感じることも多いのですが、「一人じゃない」ということを改めて実感し、お互いの背中を押し合うことが出来たようです。
今に撒かれたこの種は、真夏の日照りを乗り越え、そして収穫の秋、黄金の稲波となって観客席一面に広がるお客様として実りを結ぶはず……
翌日は大陸ごとの練習であり、翌週は東京公演。
大きな刺激を得るのはもちろんですが、それにより練習にブランクが出来てしまうのもまた事実。
秋の満席という実りの大収穫を夢見て、この期にコツコツと種まきを行うことを決意した100人でした。
レポート:黄色大陸 芝琢也