団体設立20周年のご挨拶 | NPO法人コモンビート
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団体設立20周年のご挨拶

理事長 安達亮(りょう)


日頃よりコモンビートの活動につきまして、格別のご理解とご尽力をいただき厚く御礼を申し上げます。

2023年1月1日より、コモンビートは設立から20年目の事業年度に入り、20周年記念となる節目の年を迎えました。これまでの19年間の活動を支えてくださったみなさんに改めて感謝申し上げます。

コモンビートは、地球を一周する船旅で出会った若者たちによって「ミュージカル」という芸術的アプローチから「異文化理解」を深めていこうと2004年にNPO法人として設立されました。それから20年という月日において、私たちのアイデンティティであるミュージカル「A COMMON BEAT」を中心に日本全国で活動を広げ、参加した方々のつながりやコミュニティを生み出してきました。20年続けよう!と目標に掲げていたわけではなく、いつでもどんなときも「楽しい」を土台に、変化を恐れずにがむしゃらに動き続けてきたら、気がつけば20年経っていたというのがふさわしい感覚かもしれません。「変化」といえば、団体のビジョンやスローガン、タグラインもその時代に合わせてブラッシュアップし続けています。

  • 「つくる あそぶ まなぶ」
  • 「違うからこそ美しい」
  • 「熱い気持ちが未来をつくる、感じるチカラが日本を育てる」
  • 「感受性を豊かにする『共育』」
  • 「咲かせよう自分!沸かせよう日本!」
  • 「大人が変われば子どもも社会も未来も変わる」
  • 「個性が響きあう社会へ」
  • 「地球とひとりひとりのウェルビーイング」

変化したからといって、それ以前に伝えていたことを忘れてしまうわけではなく、積み重ねてきている感覚があります。今コモビジョンで伝えている最上位の概念の「地球とひとりひとりのウェルビーイング」の中に、今までの全てを集約させているつもりです。そしてこれから先も、コモンビートに参加してくださるみなさんと一緒に、活動を創り上げていきたいと願っています。

この20年間を振り返った時に、コモンビートとして大きな出来事となっているのは「東日本大震災」と「新型コロナウィルス感染拡大」です。

東日本大震災後のボランティア活動をきっかけに石巻市(宮城県)を中心とした東北ミュージカルが立ち上がりました。「心の復興支援」をテーマに全国から経験者が石巻に集まり、地元のみなさんと一緒にミュージカルをつくりました。地元のみなさんの「新たな出会いやつながり直し」になったと同時に、地方都市と全国の「つながり」が生まれた瞬間でもありました。それまで大都市(東京・名古屋・大阪)での開催のみだったミュージカルプログラムが、「つながり」を生み出すものとして再認識されて、大都市でのミュージカルに参加していた地方出身者が「自分の地域でも」と声を上げ始めました。

そこから、福岡・福井・群馬・鹿児島・岐阜・新潟・静岡・秋田・愛媛と一気に全国に広がりました。全国に「コモンビート」というつながりが生まれ、全国に仲間がいるという安心感は何かあったときのセーフティーネットにもなりますし、人生を豊かにしてくれているはずです。この勢いは日本国内にとどまらず、さらには海を超えてお隣の韓国にも広がっていきます。韓国の市民団体と共に日韓ミュージカルを立ち上げ、国境を超えて言葉や文化の異なる市民同士での活動に発展しました。日韓市民がステージでミュージカル「A COMMON BEAT」の異文化理解と平和へのメッセージを届ける姿は大きな感動を呼びました。

「新型コロナウィルス感染拡大」は未だ終息していないですが、ミュージカルプログラムを約3年間休止にせざるを得なくなるという、コモンビートのアイデンティティを揺るがす出来事となっています。それは「ミュージカルができなくなったコモンビートの存在意義はなんなのか?」という問いを投げかけられた瞬間でした。ミュージカルはビジョン実現のための手段であることはずっと認識していましたが、その魅力と引力は凄まじく、いつしか「ミュージカルを実施することが目的」にもなりかけていました。年間で5-6本のプログラムを運営するスピードは、「なんのためにやっているのか」を考えるために立ち止まることを許さないほどのものでした。「新型コロナウィルス感染拡大」は強制的にミュージカルを休止させるものだったので、その期間に組織のビジョンや運営体制を見つめ直しました。そうして生まれたのが「コモビジョン」です。ずっと言い続けてきた「表現活動によって、自分らしくたくましい人を増やし、多様な価値観を認め合える社会の実現を目指す」その先に「地球とひとりひとりのウェルビーイング」を置きました。そのために全ての活動を通じて「多様な価値観を認め合う」のだと。

団体存続のためのクラウドファンディングでは1060万円の応援をいただき、ミュージカル再開へ向けての準備、事務局維持のための力を蓄え、2022年7月に東京、2022年10月に大阪、2023年3月に福岡と大都市でのミュージカル公演を再開させてきています。私自身もコロナ禍で自分自身の心が窮屈になっていたのもあり、もう一度この団体のアイデンティティであるミュージカルに触れ直してエネルギーを得たいと思ってキャストとして参加しました。マスク着用などの制限はありましたが、対面で集って仲間たちと心を合わせて歌って踊ることの大切さ、心が喜ぶ瞬間をたくさん感じることができました。団体の代表としても個人としても、これから先もこのミュージカルプログラムを多くの人に届けて行きたいと決意を新たにすることができました。

そして今年は「100人100日ミュージカル」を57期東京・58期大阪と本格的に再開します。また2024年1月には新潟での公演を「共催型運営」で実施し、地方都市での活動も再開していきます。

コロナ禍を経て、さらなるブラッシュアップを遂げたコモンビートはちょうど今年で20歳の節目を迎えます。ハタチの大人になったコモンビートはこれからどんな活動を起こして、社会にインパクトを届けていくのでしょうか。今までの20年間の活動で蓄積された力を次の10年、その先の未来にどう届けていくのでしょうか。

その新たな活動のひとつとして「Musical For All ーあらゆるひとに参加と鑑賞の機会をー」というプロジェクトを立ち上げます。これからコモンビートは、ミュージカルへの「参加」と「鑑賞」の間口を今まで以上に広げ、参加者と観客をより多様にしていきます。「やりたい気持ちが参加資格」と掲げ、市民公募によるプログラムをずっと行ってきましたが、様々な理由により「やりたいけどできない」と諦めざるをえなかった方もいたと思います。参加や鑑賞のハードルになるものを減らし、より多くの方とミュージカルを分かち合うために、少しずつアクセシビリティを整備していきます。私たちが持っていない専門性が必要になってくる分野であり、今までのようにコモンビートだけではやりきることのできないプロジェクトでもあり、きっと10年以上かけて歩みを進めていく大変な道のりになると思いますが、時に失敗もしながら、挑戦していきます。今までの活動に参加してくださっているコモンビートファミリーのみなさんに加えて、企業や団体、教育機関や行政・自治体とも連携しながら進めていきたいと考えています。

2004年の設立からの「これまで」を支えて下さったみなさん、本当にありがとうございます。そして20周年記念の2023年を経て、2024年からの「これから」の未来を共に創っていきましょう!今までも怒涛でしたが、これからも怒涛です!

「違い」の中にこそ「共通の鼓動」はある。

「今」に留まらずに、変化を恐れずに、コモンビートは挑戦し続けます。
今後ともコモンビートへのご声援・ご支援をよろしくお願いいたします。

2023年1月吉日
NPO法人コモンビート
理事長 安達亮