大人100人のミュージカルから、多世代・地域へ広がる表現活動のバトン!動き出した「コモンズ」のカタチ | NPO法人コモンビート

大人100人のミュージカルから、多世代・地域へ広がる表現活動のバトン!動き出した「コモンズ」のカタチ

2004年のNPO法人化以降、「100人100日ミュージカル®プログラム」を活動の中心として表現活動を行ってきたコモンビートですが、新たな取り組みとして、2025年8月15日(金)・16日(土)の2日間、東京・北とぴあで『COMMON BEAT FES 2025 in TOKYO』を開催しました。
なぜ、このタイミングで新しい挑戦が行われたのでしょうか?
その背景には2025年6月に新設した「コモンズ事業」が大きく関わっていました。
今回は、『COMMON BEAT FES 2025 in TOKYO』に込めたコモンビートに関わるメンバーの想いに迫りました!

なぜ、今「コモンズ事業」なのか?


「100人100日ミュージカル®プログラム」を通じて“個性が響きあう社会”を目指してきたコモンビート。2025年、その活動の幅をミュージカル以外の表現活動にも広げる決断をしました。

背景には、昨今の教育現場の人手不足や学校への負担増といった課題感から、今、地域ぐるみで子どもを育てる「地域教育」への期待が高まっていることがあります。そこで、コモンビートは21年間で培ってきた知見とノウハウを活かし、地域や企業と連携しながら新たな価値創造に挑戦していきます。

その推進役となるのが、代表理事兼CCO(Chief Commons Officer)河村勇希(ゆーき)が率いる「コモンズ事業」です。

大人を信じられなかった僕が、人の可能性を信じて“表現の場をつくる”理由 共同代表 CCO|河村勇希

『COMMON BEAT FES 2025 in TOKYO』は、この事業を世に示す“お披露目の場”となりました。表現ステージやワークショップ、マルシェ、教育フォーラムなど多彩なコンテンツを展開し、地域団体や企業、教育関係者と共に“市民が誰でも表現できる舞台”を目指しました。

準備段階からすでに始まっていた“共創”のステージ。世代を超えて一緒に踊る喜び

目玉企画のひとつ「表現ステージゾーン」では、地域の子どもから大人まで、多世代がダンス・演劇・合唱・朗読・バンドで舞台を盛り上げました。コモンビートも「多世代共創型パフォーマンスプロジェクト」の第一弾として、よさこいチームを立ち上げ、小学生・大学生・「100人100日ミュージカル®プログラム」の経験者を交えた多世代で構成されたメンバーで舞台に立ちました。
合同練習は小学生がわずか2回、大学生以上でも4回の短期集中型。それにも関わらず、完成度の高い演舞を披露し、観客を魅了しました。

大学生が小学生に “よさこい” を届ける!その舞台裏に密着<vol.1>【多世代共創型プロジェクト】

「コモンビートが行う『100人100日ミュージカル®プログラム』は『18歳以上』という年齢制限があります。大学生は参加できても、高校生以下は舞台に立つチャンスがありません。だからこそ今回は、子どもたちにも“表現する喜び”を経験してもらおうと考えました。
大人はこれまで培った人生経験や知識を持っていますが、子どもたちはゼロからのスタート。何もない状態だからこそ、多様な人と時間を共にする中で、「あの人かっこいいな」「あのお兄さんみたいになりたい」「あのときかけてもらった言葉が忘れられない」といった憧れや思い出が、10年先でも心に残るような経験になるはずです。『多世代共創型パフォーマンスプロジェクト』を通して、子どもたちが人生の指針となるようなロールモデルと出会い、未来につながる大切な学びを得てほしい――そんな思いが、企画の原点にあります」

そう語るのは、『COMMON BEAT FES 2025 in TOKYO』の運営スタッフであり、よさこいプログラムのリーダーを務めた谷 由紀穗(ゆっきー)です。 

「振り返ると、準備や練習の過程が “共創そのもの” だったように思います。決まった振り付けを覚えるのではなく、あえて参加者同士で踊りを考えてもらうパートを残しました。小学生と大学生が世代を超えて意見を出し合い、自分たちらしいよさこいを完成させていきました」

この共創スタイルは、参加者にも大きな影響を与えたようです。来日間もない大学生のジミンさんは、「この場に救われた」と話してくれました。

 「友人に誘われて、このプロジェクトに参加しました。練習が始まる前は、自分の語学力に自信がなくて心細く感じていましたが、子どもたちと一緒に踊りを作るうちに、自然とコミュニケーションが生まれていきました。これまで学校という狭い世界で完結していましたが、年齢を超えた出会いを通じて自分の世界が少し広がった感じがしました。参加してよかったです」

小学生出演者のみゆさんも「自信を持って100%やりきれました!自分でもここまでできるなんて思ってもいなかったので嬉しい。もう一度やりたいです!」と笑顔を見せます。

また「夢が叶った」という声も。
自身も「100人100日ミュージカル®プログラム」の経験者である出演者の保護者は、「仲間内で『早く子どもたちがコモンビートに出られる年齢になってほしいね』という話をするんです。ですが年齢制限があるので、僕らの夢が叶うのはずっと先の話だと思っていました。今回のパフォーマンスを通じて、子どもたちにコモンビートの舞台に立つ喜びを少しでも感じてもらえたのではないでしょうか」と興奮した様子で話してくれました。

コモンビートの持つ表現活動の魅力を、年齢の枠を超えて多世代に広げることに成功した「多世代共創型パフォーマンスプロジェクト」。今後の展望について、ゆっきーに尋ねると次のように語ってくれました。

「『多世代共創型パフォーマンスプロジェクト』の第一弾として、よさこいプログラムにチャレンジしてみて、短い練習期間でも、形を変えても、コモンビートのコアとなる価値は届けることができるんだと実感しました。今回の手応えや反省点を基に、今後は教育プログラムのパッケージとして、教育の現場や地域に届ける方法をより探っていきたいですね」

専門家と共に考える「感性を育む教育のミライ」

同イベントでは、教育フォーラムも同時開催されました。ゆーきがモデレーターとなり、コモンビートのアドバイザーである前野 隆司氏、箱田 賢亮氏と共に、「感性を育む教育のミライ」をテーマに議論を深めました。

COMMON BEAT 教育フォーラム 2025 in 東京 開催レポート | NPO法人コモンビート

武蔵野大学ウェルビーイング学部長の前野氏は、自己表現とウェルビーイングの関係について、「美しいものを想像する人ほど幸福度が高い」と紹介。アートを鑑賞するだけでは幸福度が特段高くなるわけではありませんが、アート活動を行う人は年齢に関わらず幸福度が高い傾向があるといいます。つまり、コモンビートの表現活動に参加することは、自己発見や幸せにつながる可能性があると述べました。

一方、コロンビア大学教育学博士でマルバーンカレッジ日本校教育ディレクターの箱田氏は、「生徒の好奇心に火をつける」ことをテーマに講演。生徒中心の教育の重要性を解説し、特に「MUST(〜しなければいけない)」から「WANT(やりたい)」への学びへの転換を強調しました。実践事例として、箱田氏が行うサマースクールでのパフォーミングアーツ体験も紹介。最後に「子どもたちのために、共に明るい未来と教育環境をつくりましょう」と力強く呼びかけました。

今回のフォーラムを通じて浮かび上がったのは、教育と表現活動が持つ大きな可能性です。これまでコモンビートの活動は主にミュージカルに焦点を当ててきましたが、専門家との対話を通じて「コモンビートとは何か」「ミュージカル以外の関わり方も提示できる」という視点を改めて伝える機会になったと、ゆーきは語ります。

「表現活動」と「教育」がつながることで、誰もが自分らしさに出会い、未来を描く力を育むことができます。コモンビートは、コモンズ事業を通じて、今後もそんな学びの場を広げていこうとしている――その瞬間を垣間見られたフォーラムでした。

手応えを胸に、次のステージへ

「何もかもがゼロから作り上げる必要がありました。ここだけの話、お盆休みの影響でのぼりが届かず、前日に自作しました。いやぁ、焦りましたね」
そんな裏話を笑いながら語る、ゆーき。

20年以上の歴史を持つ、「100人100日ミュージカル®プログラム」とは異なり、今回の『COMMON BEAT FES 2025 in TOKYO』は、コンセプトも小道具もマニュアルもない、まっさらな状態でのスタート。コモンズ事業部が今年立ち上がったばかりで、企画もゼロから始まりました。普段のミュージカル公演の観客席と違い、当日まで来場者の数を事前に確実に見込めるわけでは無い中で、直前までどれくらいの人に来場してもらえるのか不安があったと振り返ります。

しかし、蓋を開けてみれば、約415人が来場し、会場は大盛況。「100人100日ミュージカル®プログラム」のアルムナイ(卒業生)から、出展者やフォーラム目当てで参加し、初めてコモンビートを知ったという人まで、新しい層にコモンビートの魅力を届けることができました。

「本当に大変でしたが、スタッフの成長に助けられました。イベントを創り上げる中で、ミスも新しい壁として楽しめるようになったのは大きな出来事だったと思います」
スタッフ一人ひとりがコモンビートの価値を再確認し、自分の言葉で伝え合い、共に場を創り上げる。イベントの成功に止まらず、インナーコミュニティの文化形成にもつながる機会になった様子がうかがえました。

最後にゆーきとゆっきーの二人が、コモンズのこれからを語ってくれました。。
「何もかもが初めてで手探りの中、それでも出演や出展を決めてくださった皆さまのおかげで、無事に完走することができました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです!
ミュージカルは“非日常”の世界にあるものですが、『COMMON BEAT FES』は、地域や企業と共に、フラットにつながる“日常”の瞬間をつくれたと思います。
これはコモンビートが思い描いている未来のつながりへの第一歩。今回を皮切りに、表現することの楽しさをより多くの人に届けていきたいですね!」

今後は、全国での学校や団体へのアウトリーチ、多世代共創型プロジェクト、表現教育コミュニティ運営を通じて、学びとつながりを広げていく予定です。地方展開や教育プログラムの拡張、さらに多様なコラボレーションも視野に入れています。

「コモンズ事業」が描く新しい挑戦から、これからも目が離せません。


今回行われたミュージカル『A COMMON BEAT』第64期東京公演を皮切りに、『COMMON BEAT FES』は全国へ。

65期名古屋公演(2025年9月13日(土)・14日(日)/岡谷鋼機名古屋公会堂)も大成功におわり、2025年の最後は、66期九州公演(2025年12月27日(土)・28日(日)/福岡市民ホール)です。

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