20年以上続く、NPO法人の「自発的なリーダーシップ」とは? | NPO法人コモンビート

20年以上続く、NPO法人の「自発的なリーダーシップ」とは?

コモンビートのミュージカル公演を支える、「ウェルカムキャスト」。過去にコモンビートのミュージカルへ出演した卒業生たちによって運営されています。毎回、全国各地から100名以上ものメンバーが集まり、数千人規模のミュージカル公演を運営。20年間、大きな事故もなく公演を続けることができています。

今回、その卒業生たちが「どんな動機や理由でウェルカムキャスト(=公演運営)に参加しているのか」をまとめた研究が、2024年のNPO学会で優秀賞を受賞しました。今回はその内容も含め、ウェルカムキャストから見えてくる「自発的なリーダーシップ」の大切さをご紹介させていただきます。

コモンビートの現場から生まれる「自発的なリーダーシップ」

いつの時代も求められてきた「リーダーシップ」ですが、そのリーダーのあり方は時代の移り変わりとともに変わってきています。一昔前まではリーダーのあり方も、「権限による支配」でしたが、そこから「信頼による共創」へと変わってきました。

その中で、リーダーの素質として求められるものは、「未来を描く力」だったり、メンバーとの信頼や協力を得るための「コミュニケーション力」、「信頼関係を築くこと」だったりします。

このリーダーシップの力は、コモンビートのミュージカル現場で自発的に生まれています。キャストの練習スケジュールを組んでいくスタッフや、キャストの衣装をコーディネートする衣装班、ダンスを一緒に練習していく中でも「もっとこうした方がいいんじゃないか」「こうしたら面白そう」という発想や声を挙げていく環境が自然とコモンビートのミュージカル現場にはあります。

そんな「リーダーシップ」が自発的に生まれていく環境がコモンビートのミュージカル現場にはあり、それぞれがこれからの101日目を過ごすための糧となるのです。そして今回紹介する、「ウェルカムキャスト」はそうしたミュージカルの現場で培った「自発的なリーダーシップ」を実践する場としても発揮されます。

そもそもウェルカムキャストって?

コモンビートのミュージカル公演では、会場運営を担当するスタッフを「ウェルカムキャスト」と呼んでいます。舞台に立っているキャストだけでなく、お客様を迎えるスタッフも、公演の重要なキャストとして考えられています。「ウェルカムキャスト」は、過去にミュージカルプログラムに参加した卒業生たちで構成されています。毎回、全国から100名以上が参加し、年間では約500名以上が、公演運営に携わっています。

ウェルカムキャストのディレクターは全国からの公募で選ばれた約4名が担当し、公演の2ヶ月以上前から準備を進めます。また、ウェルカムキャストは「チケットもぎり」や「ホール内の誘導」、「ビデオ撮影」など、12の部署に分かれ、各部署のリーダーのもとで、即席でチームを結成し、オペレーションを組み立てて運営をしていきます。

外誘導担当は、暑い夏でも寒い冬でも雨が降っても雪が降っても・・・駅から会場までの道路で立ち、お客様を笑顔で誘導します。
チケットもぎり担当は、4500人のチケットをもぎり、パンフレットをお渡しします。

今回のNPO学会から最優秀賞をいただいた研究では、2023年にウェルカムキャストへ参加してくれた77名へアンケートを実施。どういう動機や想いで参加してくれているのかを調査しました。

その結果、「レクレーション」「社会適応」「テーマや対象への共感」の因子が高いことがわかりました。これは、たとえば地域の祭りを支える実行委員のように、地域や場への愛着を持ち、運営や盛り上げに積極的に関わる人たちと共通するものです。このことからも、ウェルカムキャストに参加するメンバーは、地域住民が「自分の地域のお祭りを盛り上げたい、支えたい」という想いを持って参加している動機に近いものがあると考えられます。

また、人が活動に価値を感じるとき、その“報酬”は以下の5つに分類できると言われています。

①金銭報酬(お金がもらえる)
②共有報酬(仲間とつながれる)
③成長報酬(自分の成長を感じられる)
④役割報酬(自分に役割や居場所がある)
⑤感謝報酬(「ありがとう」と感謝される)

この枠組みに当てはめてみると、ウェルカムキャストの活動では、金銭報酬を除いた4つの報酬がまんべんなく得られていると参加者が感じていることが明らかになりました。

さらに、上記の4つ報酬(仲間、役割、感謝、成長)の感じ方にはウェルカムキャストへの参加歴やそこで担っている役割によって違いがあることも見えてきました。

ウェルカムキャストに初めて参加するメンバーは、「仲間」や「感謝」に強く価値を感じますが、2回以上参加しているメンバーは、「成長」や「役割」に価値を感じている傾向が見られました。

このように多様な報酬(仲間、役割、感謝、成長)が得られている背景には、ウェルカムキャスト特有の“緩やかな管理スタイル”があると考えています。指示や義務ではなく、一人ひとりが自分の中で「なぜ参加するか」の意味づけをし、納得したうえで参加を決められる風土が作られている、そして参加動機も一つではなく、「仲間と過ごしたい」「誰かに感謝されたい」「自分の役割を持ちたい」「成長したい」といった複数の動機が存在することが、組織に主体的なリーダーが自発的に生まれる場のデザインである、とコモンビートは考えています。

最後に、新潟県からウェルカムキャストに参加した小田健太郎(けんぞー)は、こう教えてくれました。「2日間でこんなにたくさんの人を束ね、1〜2日でチームアップを行い、課題解決をしながら公演運営をコーディネートしていくことが本当に面白い。これが、自分が他の地域までやってこようと思える動機です。」


これからもコモンビートでは、自分らしく・たくましく生きる個人を増やし、多様な価値観を認めあえる社会の実現を目指していきます。ここまで、お読みいただきありがとうございました!